1957年にマレーシアが英国から独立して以来、多くの点が変わった。マレーシアは入植者が切望していたスズやゴムの生産から、エレクトロニクス製品工場ややし油用農園に軸足を移した。今やイスラム金融の拠点になっており、世界有数の超高層ビルが並び立つ国でもある。

  しかし変わらない点も多い。少数民族に不利な数十年来の法令に加えて、汚職や縁故主義も根強く残っている。政党の党首から一般大衆へと資金が渡っていく金権政治もまかり通っており、与党連合が60年にわたって政権を維持する一因になっている。首相の汚職疑惑に対する抗議デモが行われてもなお、野党が近い将来に現状を打破する公算は小さく、より開かれた現代的国家となるためのマレーシアの取り組みは後退しているとの指摘も聞かれる。

汚職疑惑

  汚職スキャンダルの舞台は、ナジブ首相が2009年に設立し、1MDBという略称で知られる政府系投資会社だ。米司法省は首相の個人口座に預け入れられた6億8100万ドル(現在の為替レートで約770億円)が1MDBから盗まれたものだと主張。これに対し首相はサウジアラビアからの寄付金であり、所属する統一マレー国民組織(UMNO)と「一般社会で必要とされているもの」に資金を充当したと説明した。このスキャンダルはスイス、シンガポールなど複数の当局が捜査に乗り出す事態に発展した。

  マレーシアの捜査当局は首相に不正行為はなく6億2000万ドルが寄付者に返金された上に、首相が他のいずれの捜査の対象にもなっていないと説明した。米当局は1MDBからは35億ドル以上の金額が不正に引き出されており、一部は「ウルフ・オブ・ウォールストリート」という映画の製作費に充てられたと主張している。

  数万人が参加する反汚職デモが行われた。しかし、それから1年しか経っていないにもかかわらず、16年の州議会選挙では与党連合の国民戦線が圧勝し、18年中盤に予定されている総選挙でも勝利する可能性がうかがえる。その一因は、現首相批判の急先鋒アンワル・イブラヒム氏が14年に同性愛の罪で収監された後(人権擁護団体によれば政治的動機に基づく事件)、内輪もめが激化して野党が分裂しているためだ。現政権はまた反対派を弾圧し、扇動に関する法律を根拠にメディア幹部や活動家、風刺漫画家さえも拘束している。

人種間の緊張と優遇策

  マレーシアは1998年のアジア通貨危機時の経済的打撃から立ち直って、コモディティー大国としての地位を確立した。今やアジア唯一の原油純輸出国で、世界2位のやし油出荷国になっている。人口3170万人のこの国には世界で最も高いツインタワーと世界最大のイスラム債市場が存在する。安定した政府に投資家寄りの政策、およびイスラム教という寛容なブランドも寄与して、マレーシアは欧州・アジア間の通商の導管としての歴史的役割を基盤に自国を築いている。

  この国の歴史はまた、人種間の緊張によっても形作られてきた。1969年にマレー系と中国系との間で民族衝突が起きた当時、ナジブ氏は10代だった。父親のアブドゥル・ラザク・フセイン氏がその翌年に首相に就任し、マレー系と先住民族から成るブミプトラ、いわゆる「土地の子」を優遇し、中国系の実業支配を減らす制度を打ち出して収拾に当たった。住宅費用軽減や大学奨学金などの優遇策は今も続いている。

なお続く論争

  ヒューマン・ライツ・ウオッチなど批判的な立場を取るグループは、マレーシアには反対派の伸張やより自由なメディア、およびより強力で独立した汚職取締機関が必要であり、今後スキャンダルが再び起きないようにするため汚職を促すような利権政治を根絶すべきだと主張している。選挙資金規制を強化すれば、金権政治のまん延は軽減されるだろう。ナジブ首相がこうした指摘に応じて設立した委員会の委員長は、海外や政府系からの寄付を禁じる意向を示した。

  財界首脳はブミプトラ政策が競争を妨げ、既に他の東南アジア諸国に後れを取り始めている経済の足かせになっていると主張。これに対して政府は、マレー系の経済的窮状を改善するためにブミプトラ政策は依然必要だと主張している。ナジブ首相は景気浮揚を狙って高速道路や輸送手段に数十億ドルを投じる一方、財政状況改善のために燃料と砂糖に関する助成金を撤廃している。マレーシアの学識者は、国内でイスラム教徒が過激化する可能性に警鐘を鳴らしている。

原題:Malaysia’s Modern Ambitions Curbed by Politics of Old: QuickTake(抜粋)

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