合弁運営するメモリー事業の売却を巡る東芝と米ウエスタンデジタル(WD)との対立が日米での訴訟合戦に発展した。こうした中、東芝と「日米韓連合」との売却交渉は難航している。両者の提訴は今後の売却手続きにどのような影響を及ぼすのか。国際法務に詳しい柳田国際法律事務所の柳田一宏弁護士に聞く。

  先手を打ったのはWDだった。合弁契約に基づきメモリー事業の売却にはWDの同意が必要だと主張。5月14日に国際仲裁裁判所に仲裁を申し立て、6月14日には米カリフォルニア州の裁判所に売却手続き差し止めを求める訴えを起こした。一方、東芝は6月28日、東京地裁に1200億円の損害賠償や妨害行為の差し止めを求める訴訟に踏み切った。

東芝のメモリーモジュール
東芝のメモリーモジュール
jewel: its flash-memory business. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  東芝は債務超過を解消するため4月に分社した東芝メモリを2兆円超で売却する計画で、優先交渉先に選定した日米韓連合と個社の出資比率やWD問題の扱いを含む条件交渉を進めているが、いまだ契約締結には至っていない。柳田氏は、産業革新機構や日本政策投資銀行など「買い手側が係争リスクを恐れて慎重姿勢になっている可能性がある」とみている。

  米裁判所では14日に法廷審問が行われる予定だ。ここでは①日本での問題で管轄外だとして門前払い(棄却)となる②中身を見た上で仮処分を認めない③売却差し止めの仮処分を認める④明確な判断は示さないーなどが想定される。

  柳田氏は、米裁判所で売却中止の仮処分決定が示されても、売却主である東芝が日本企業であることなどから、司法管轄権は及ばないのではないかとの見方を示した。しかし、東芝や売却先当事者の間で、今後の係争リスクに関する付帯条項をどのように盛り込むかなどで売却契約の協議が難航している可能性があるという。

双方の差し止め請求

  柳田氏は、東京地裁と米加州裁判所のどちらで先に判断が出るかは見通しにくいが、「仮処分は早く審理する必要」があり、東京地裁の判断は準備を経て「審理が始まってから数週間で決定まで出るケースもある」とみている。一方、損害賠償(本訴)は訴状をWDに送達する期間を含め、かなりの時間を要するという。

  WDは米裁判所への提訴に先立ち国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てた。柳田氏は仲裁裁の判断が最終的には東芝メモリの売却の可否を左右するが、判断には1、2年かかる可能性があるためWDは並行して米裁判所にも速やかな判断が期待できる仮処分を申し立て、売却手続きをいったん止める作戦に出たようだと分析した。

  一方、東芝の日本での提訴について柳田氏は、「主眼は損害賠償ではなく、WDの敵対姿勢を止めることにある」とみる。合弁解約にはメモリー事業の売却にはWDの同意が必要と明記されているかのようなWDの振る舞いが不正競争行為や不法行為に当たるなどと主張した。米裁判所への訴訟では今回のケースに同裁判所の管轄権は及ばないとの主張を含む反論書を提出している。

  東芝の綱川智社長は6月の会見で、「WDとはこれまでも協力してきた。一緒に投資しサムスンと戦いたい」などと述べ、係争関係は避けたいとの意向を明らかにしている。

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