出光興産が公募増資に伴う新株を発行する計画に対し、創業家は新株発行を差し止める仮処分を東京地方裁判所に申し立てた。出光興産は、創業家の主張について「明らかな誤り」と反論しており、新株発行を巡る創業家と経営陣の争いは法廷で裁かれることになるが、専門家の間でもどちらの主張が通るのかについては見方が分かれれている。

  出光興産が5日発表した資料によると、創業家側は申立書で「新株発行は現経営者の支配権維持を主要な目的としてなされたものであり、著しく不公正な方法による発行」と主張。会社側は、新株発行による資金調達は「国内事業基盤の強化、成長事業の育成、財務体質の強化に必要」であり、創業家の主張は「明らかな誤り」と反論した。

  昭和シェル石油との合併計画を巡って出光創業家と経営陣の意見は対立しており、出光株の33.92%を保有する創業家は、株主総会で3分の2以上の賛成を必要とする合併決議を否決できる比率を持つことから、合併計画は無期限延期となっていた。会社側は3日、発行済み株式総数の3割に相当する4800万株を発行し、最大1385億円を調達すると発表。創業家の持ち株比率は26.09%に低下して合併決議を単独で否決できる比率を下回ることから、これを阻止するために法的措置に訴えた。

  どちらの主張が通るのかについては弁護士や専門家の間でも見方が分かれており、裁判所の決定に注目が集まる。会社法などを専門とする松川雅典弁護士は4日、「合併を強行するためという目的がどうしても払拭(ふっしょく)できず、仮処分の申し立てが認められる可能性が高い」と指摘する。一方で、同じく会社法などを専門とする金子博人弁護士は、会社側は創業家側からの差し止め仮処分申し立てを予想して徹底的に作戦を練っており、「恐らく差し止めは無理だと思う」と語った。

割り切れない過去の判例

  出光興産は新株の発行価格を12ー19日に決定し、払込日を20-26日と予定している。会社法などを専門とする明治大学大学院の根本伸一教授によると、会社法の規定に基づき、早ければ20日には新株の効力が発生し、東京地裁は効力発生までに差し止め請求の可否について判断を下す必要がある。

  同教授によれば、創業家側の主張する「著しく不公正な方法(不公正発行)」とは、現経営陣が支配権維持のために関係する第三者に新株を割り当てることで、裁判所によって資金調達よりも支配権維持が主目的と判断された場合には、不公正発行として差し止め仮処分が認められる可能性がある。

  根本教授によると、資金調達の必要性が認められれば不当な目的が存在していたとしても不公正発行に当たらないとされた過去の判例が多い一方、最近の傾向として支配権争いのある状況下での第三者割当増資に裁判所から厳しい態度が示されており、「新株の不公正発行を巡る裁判例は一義的に割り切れない」という。今回は公募増資のため形式的には「不公正発行としての差し止めは困難」となるが、会社支配権を巡る対立が存在することが明白なことから、第三者割当増資のルールが当てはまるという論点が浮上する可能性もあるという。

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