カジノを含めた統合型リゾート施設(IR)実施法の制定に向け、自民党のプロジェクトチーム(PT)は5日、政府案に基づく本格的な議論に入る。IRを認める設置要件や区域の選定方法などについて、大都市だけでなく地方型のカジノも参入可能となるよう政府と調整を図る方針だ。

  自民党PTの岩屋毅座長は3日のインタビューで、政府が有識者会議に示したIRの認定要件案に「大都市と地方では体力が違うのに、同じ物差しを当てはめるのはいかがなものか」と、疑問を呈した。その上で、「地域のポテンシャルにあった経済、観光振興、雇用創出効果が認められれば、地方型を認めていいのではないか」との考えを政府に伝えると語った。

  政府のIR推進本部は5月、国際会議場や劇場・博物館など4機能を完備し国際競争力を有することをIRの認定要件とし、有識者会議に「今後の議論の方向性」として示した。合わせて地方公共団体が事業者を選び、具体的な計画を立ててから国に申請する手順としたことから、集客力の弱い地方都市が政府の認定要件を満たす事業者を誘致するのが難しい状況となった。

  認定地域は2-3カ所と想定されていることから、小規模リゾート型カジノを得意とする事業者からも不利な条件だと不満の声があがっていた。

IR推進法

  昨年12月に国会で成立したIR推進法では、「観光および地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資する」と明記しており、地方再生や地域振興も視野に入れていた。岩屋氏は法案をまとめた超党派議連の中心メンバーの1人。

  国内では自民党がカジノ導入検討を始めた2002年頃から複数の自治体が誘致活動をしてきたが、政府の認定要件の方向性が示された以後、米ラスベガス・サンズ、マカオでカジノ運営をするメルコリゾート&エンターテインメント、米MGMリゾーツ・インターナショナルなど大規模事業者は選考に有利な東京都、横浜市、大阪府・市などに関心を示していた。

マイナンバーカード

  自民党PTは日本人の入場制限についても政府と意見交換する予定だ。政府のIR推進本部は依存症対策の観点から外国人旅行者以外の入場に回数制限を設け、入場時の本人確認には複数のカジノ施設の出入り管理が可能なマイナンバーカードを用いることを提言している。

  政府IR推進本部事務局の中川真次長は、マイナンバーカードの活用はICチップ内蔵の電子証明書による最新の本人情報が確認できるとして、「国民に依存症への懸念がある以上、きちんとした制度でリスクを遠ざけるのにベストな手法」と述べた。顔認証が可能なことも不正防止につながるとしている。

  岩屋氏は、こうした厳密な入場管理が「日本人の利用を極端に制限する可能性がある」と危惧する。マイナンバーカードの交付率は今年5月時点で9%にとどまっており、カジノ設置時点での普及率は未知数と指摘。入場回数制限は依存症による本人申告、もしくは家族申告があった場合のみ適用すべきだと述べた。

米国の例

  ラスベガスなどを抱える米国では、カジノで600米ドル以上を獲得した場合のみ、日本のマイナンバーカードにあたるソーシャルセキュリティーカードの提示を求め、獲得金額を渡す際には日本の国税庁にあたる内国歳入庁(IRS)への申告書類を手渡すことになっている。ただ、連邦規則はカジノ業者に富裕顧客の情報を把握することを求めており、違反した場合には数百万ドルの罰金が科される。

  岩屋氏は、日本では依存症への配慮が大きくなるのは仕方がないとしながらも、「ギャンブルを楽しむことが悪という考えでは、せっかくのIR構想が成功につながらない」と述べ、「国民の行動が政府の監視の下におかれる」制度にならないよう与党として意見を伝えると語った。

  政府のIR推進会議は、夏をめどにカジノ解禁に伴う法規制などを定めた実施法の大枠をまとめる予定。その後、パブリックコメントを行った上で、与党との協議を経て秋の臨時国会に法案として提出し、年内の成立を目指す。

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