北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、同国が初めて実験に成功したと主張する大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を命じた際、米中両国政府の怒りを買うことは承知していたと考えられる。

  金委員長は「火星14」と呼ぶミサイルの試射で最大限の効果が得られるよう、4日の米独立記念日を控えてタイミングを計った可能性もある。また、今週ドイツで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議で予定されているトランプ米大統領と習近平中国国家主席との会談に水を差す目的もあったかもしれない。

  動機が何であれ、ここ数カ月の相次ぐ他のミサイル発射に続く4日の試射は、金委員長が国際制裁やトランプ大統領によるけん制、中国からの圧力にも動きを緩めていないことを示している。それどころか同委員長は、より規模の大きな核抑止力を獲得する取り組みを加速し、米国本土を攻撃できる核弾頭を搭載可能なミサイル開発を究極の目標としている。

  こうした状況は米中両国の北朝鮮対応の相違につけ込む金委員長の動きを抑止することの難しさを浮き彫りにしている。トランプ大統領は中国が北朝鮮に対して十分に手綱を取れていないと批判する一方、中国の国連大使は今週、米国と北朝鮮が交渉を再開できない場合、「悲惨な結果になる」と警告している。

  北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議で中国側交渉担当者を務めた経歴を持つ楊希雨氏は、「今回の発射の意義は、ゲームの流れを変えることではなく、ゲームを長引かせることにある」と指摘。「北朝鮮はここにきて、マラソンのように長期間にわたり国際社会と対峙(たいじ)する姿勢を取り始めた。従来は中距離レースだった」と付け加えた。

  国連安全保障理事会は米国のヘイリー国連大使からの緊急会合開催要請を受け、5日午後に北朝鮮問題に関する非公開会合を開催する。米国連大使の報道官が明らかにした。

  トランプ米大統領はミサイル発射の報道後、ICBMだと北朝鮮が主張する前にツイッターで、「恐らく中国が北朝鮮に大きな動きを取り、こうした愚かなことを完全に終わらせるだろう」と投稿。これに対し中国外務省の耿爽報道官は、中国政府が金委員長に圧力をかける上で「不可欠の存在」となってきたとコメントした。

  北朝鮮は兵器プログラムを「正義の貴重な剣」と位置付け、挑発行為を利用して隣国から支援の形で譲歩を確保してきた。一方で北朝鮮の主要な経済的ライフラインとなっている中国は、北朝鮮を過度に圧迫すれば金体制の崩壊につながり、国境で混乱を招きかねないとして慎重な姿勢を取っている。

  こうした中、米中首脳の間で幅広い問題を巡って緊張が生じつつある。米大統領との今週の電話会議で習主席は、米中関係が「ネガティブ」な方向に転じたと懸念を表明した。米国は最近、台湾への13億ドル(約1500億円)相当の武器売却を発表した上、中国が人身売買犯罪で世界最悪の国の一つだとする報告書を公表。また、ノーベル平和賞受賞者で民主活動家の劉暁波氏に海外でがん治療をさせるよう中国政府に呼び掛けた。

  独ハンブルクでの米中首脳会談は北朝鮮問題が中心になる公算が大きい。トランプ米大統領は北朝鮮に対し軍事力を含めて全ての選択肢が利用可能だと述べているが、攻撃に踏み切れば北アジアに惨事を引き起こす恐れがあると隣国諸国は警告している。また、韓国の新政権は北朝鮮との交渉を優先する姿勢を取っており、トランプ政権と対立する危険性をはらんでいる。

  中国共産党幹部の養成学校である中央党校の張璉瑰教授は、米中「双方の首脳は北朝鮮に両国関係を操らせないよう非常に注意する必要がある」と述べ、「ICBMの発射は中米関係に巨大な影響を及ぼし、深刻なダメージを与える恐れもある」と指摘した。

  

原題:Kim Seeks to Exploit U.S.-China Tensions With Missile Claims (2)(抜粋)

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