中国のインターネット企業テンセント・ホールディングス(騰訊)の最高幹部らで構成するリーダーシップ委員会は通常、年1回の社外会合を日本のリゾート地や米西海岸シリコンバレーのホテルで開く。だが昨年秋はゴビ砂漠を2日かけて旅するという画期的な会合だった。

馬化騰CEO
馬化騰CEO
Photographer: Imaginechina via AP Photo

  1日目の26キロの移動の終わりに、一部メンバーは音を上げ、早く帰ろうと言い出した。だが、テンセントの劉熾平社長や馬化騰最高経営責任者(CEO)はこのまま先に進もうと主張した。2日目に幹部らは再び26キロ前進、かつてシルクロードの分岐点として栄えた敦煌に到着した。ゴビ砂漠を幹部がさまよう以前から、同社の株価は上昇。中国のみならずアジアで最も時価総額の大きな企業の座を最大のライバルであるアリババ・グループ・ホールディングと競い合うまでになった。ホテルに戻ったテンセント幹部らは祝杯を挙げた。

  テンセントの首脳陣が世間に知ってほしいと考えているのは、彼らの熱狂の対象が株価ではないということだ。熱くなるのは同社の旅路についてだ。ゴビ砂漠から香港の高層ビルに戻った劉社長は「旅は当社のカルチャーを表している。株価より、会社が向かっている方向とそのプロセスをわれわれはずっと重視している」と話した。

  テンセントが最終的に目指す先は世界だ。中国国内では人々の生活にすでに深く浸透した。同社のメッセージアプリ「微信」と「QQ」を使ってメールやショッピング、デート、動画鑑賞、ゲームを楽しむ国民は全体の3分の2を超える。

  馬CEOは19年前、大学のクラスメート3人と友人1人と一緒に深圳の狭いオフィスでテンセントを創業した。同僚や友人によれば、馬氏は広東省の典型的ビジネスマンで、内気で自らにスポットライトが当たるのを嫌う。2015年に習近平国家主席が世界のテクノロジー企業幹部28人と会合を持った際の写真では、ジェフ・ベゾス氏やティム・クック氏ら参加者全員がカメラに向かってほほ笑む中で、馬氏だけが足元を見つめていた。

  馬氏がテンセントのビジョンを描くリーダーだとすれば、劉社長は首席ストラテジストであり、日々の業務をつかさどる世話役だ。テンセントが四半期ごとに開く投資家とアナリストとの電話会議で質問を次々とさばいていくのも劉氏だ。細身で眼鏡をかけた劉社長は敬虔(けいけん)なクリスチャンであり、ゲームを愛好する。ゴールドマン・サックス・グループでバンカーをしていた経歴も持つ。少なくとも彼と接したことのある人々の間では尊敬を集めている。

 劉熾平社長
劉熾平社長
PHOTOGRAPHER: PIERFRANCESCO CELADA FOR BLOOMBERG BUSINESSWEEK

  そんな劉氏を「シリコンバレーでは大半の人が全く知らないと思う」と語るのは、ベンチャー企業VYキャピタルのサンフランシスコオフィスで投資マネジャーをしている中国生まれのショーン・リウ氏だ。「ショッキングなことだ。フェイスブックを気に掛けているのに、シェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)を知らないのも同然だからだ」と付け加えた。

  劉社長は米国の大学に通っていたほか、流ちょうな英語をしゃべるが、これまでは欧米メディアの注目を浴びないようにしていた。だが、もうその必要はないだろう。正真正銘の中国企業を世界で通用するテンセントに前進させるという恐るべき難題に挑むのだから。

原題:Tencent Dominates in China. Next Challenge Is Rest of the World(抜粋)

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