出光興産は3日、最大1385億円の公募増資を実施すると発表した。昭和シェル石油との合併計画に反対する創業家の持ち株比率は低下し、合併決議の否決に必要な3分の1を下回ることになる。これに対し、創業家側は新株発行の差し止め仮処分を申し立てる方針を明らかにし、真っ向対決の様相となっている。

  同社が3日発表した有価証券届出書と臨時報告書によると、出光の発行済み株式総数1億6000万株の3割に相当する4800万株を新たに発行し、国内で約977億円(3360万株)、海外で約419億円(1440万株)を調達する。これにより、ブルームバーグの計算によると、創業家の株式出資割合は33.92%から26.09%に減る。

  出光は調達資金のうち255億円をベトナムのニソン製油所など海外投融資に充当するほか、112億円を愛知製油所設備など国内投資、155億円を研究開発資金に振り向け、残りを昭シェル株取得時に調達した短期借入金の一部返済に充てる計画だ。

  創業家代理人の鶴間洋平弁護士は3日、創業家の議決権比率を希釈化することを目的とすることは明らかだとして、公募による新株発行の差し止め仮処分を申し立てる方針だと電子メールで報道機関に通知した。出光の広報担当は3日、公募増資は創業家の持ち株比率を引き下げるためでなく、必要な投資資金の確保のためだと述べ、創業家による仮処分の申し立てに関してはコメントを差し控えた。

  ミラボー・アジア(香港)のトレーディング担当ディレクター、アンドルー・クラーク氏は、公募増資は「合併を可能にするために創業家の持ち株比率の希薄化を狙って行われたことはほぼ間違いない。創業家は公募増資を阻止する動きに出ると考えられるため、合併は遅れる可能性がある」と述べた。

  出光は15年7月に英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)から昭シェル株の約3割を取得することで合意し、同年11月には昭シェルと合併による経営統合で基本合意した。これを受けて、出光創業家は16年6月の株主総会で合併への反対を表明。3分の2以上の賛成を必要とする合併決議が可決できない状況に陥り、17年4月に予定していた経営統合を無期限延期したまま、こう着状態となっていた。

  調査会社スマートカルマでアナリストを務めるトラビス・ランディ氏は、新株発行は創業家の保有株の希薄化につながるため、実質的な「宣戦布告だ」と指摘する。また創業家は6月末の株主総会で合併計画を主導する月岡隆社長らの取締役選任議案の反対を他の株主にも呼び掛けたものの、全12人の取締役選任議案は可決されたことから、経営陣も株主からのサポートを受けていると言いやすいだろうとの見方を示した。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE