世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESG(環境・社会・ガバナンス)指数に連動した日本株のパッシブ運用を1兆円規模で始めた。長期的な収益向上と日本企業をめぐるESG評価の高まりを狙う。

  GPIFが3日公表した資料によれば、当初選定したのは3指数。このうち「FTSE Blossom Japan Index」と「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」は、環境への配慮と社会的責任、ガバナンス(企業統治)の全てを考慮した総合型。「MSCI日本株女性活躍指数」は、「社会」に属する女性活躍に着目したテーマ型となっている。「環境」分野でもテーマ型の指数を継続審査中だとしている。

  高橋則広理事長は同資料で、GPIFが「今回選定したESG指数の活用が日本企業のESG評価が高まるインセンティブとなり、長期的な企業価値の向上につながるよう期待している」とコメントした。また、ESGを重視する海外投資家の注目が高まれば「日本株の投資収益が改善する可能性も高まる」と指摘し、こうした好循環の「恩恵を大きく享受できるのが広範なポートフォリオを持つ大規模な投資家であるGPIFであり、年金の被保険者だ」と説明した。

高橋GPIF理事長
高橋GPIF理事長
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  GPIFは昨秋にかけて国内株式に関するESG指数を公募し、14社から27件の応募を得た。これらの指数に関して延べ数十回のヒアリング、現地調査、合計7回にわたる運用委員会での議論などを経て決定に至った。高橋理事長はESG指数に基づくパッシブ運用は「当初は国内株全体の3%程度、約1兆円で運用を開始した」と説明。「将来的には他のESG指数の活用やアクティブ運用などを含めて拡大していく」としている。

親指数上回るリターン

  GPIFの運用資産は昨年末時点で144.8兆円。年金特別会計の約2.5兆円も含めた積立金全体に占める国内株式の割合は24%弱で約35兆円。今回採用したESG指数は全体の8割超を占めるパッシブ運用の中で、TOPIXなどに連動する時価総額型、2014年に始めたスマートベータ型と並ぶ新たな区分とする。運用資産の23%強、約34.1兆円を占める外国株式でも、マネジャー・エントリー制の枠組みで提案を受け付け、順次審査を行う方針だ。

  今回採用されたFTSEのESG指数は、親指数の約500銘柄から国内外でのESG要因への対応力が優れた日本企業151銘柄を抽出。MSCIの総合型は、同ジャパンIMI指数の時価総額上位500銘柄から、業種ごとに時価総額が半分になる251銘柄に絞った。MSCIの女性活躍テーマ型は同じ親指数を基に、各業種から性別多様性スコアが高い上位半数に当たる212銘柄を選んだ。

  GPIFのまとめによれば、総合型2指数を40%ずつ、テーマ型を20%の構成比でESGポートフォリオを組んだ場合、過去5年間のリターンは14.83%、リスクは17.62%。3指数ともリターンは親指数より高く、リスクは低かった。

  GPIFはESG評価について、財務分析とは異なり、現時点ではスタンダードとなる評価手法は確立されておらず、必要な情報の開示も十分とは言えないとみている。今回採用したFTSE社とMSCI社のESG評価の相関関係も緩い相関にとどまっていると指摘。ESG評価の精度向上には「企業側の情報開示の促進」と「評価手法の改善」が不可欠だとの見方を示した。

コンサル兼業か否かがポイント

  GPIFの広報責任者、森新一郎氏は3日のインタビューで、ESG投資では指数会社の役割が大きいと指摘。「機械的に対象企業が決まるのではなく、指数の設計や銘柄選定を担うアナリストの裁量余地が大きく、アクティブ運用に近づいている」ためだと説明した。「その分、透明性や中立性とその基になるガバナンスや利益相反がより厳しく問われる」と言う。

  「その際、コンサルティング業務を兼ねているか否かが大きなポイントになる」と、森氏は指摘。「実際にやましいことはないと思うが、コンサル業務を依頼しないと企業の評価が上がらないのではないかといった憶測が浮上すること自体が問題だ」と述べ、コンサル兼業の指数会社は「今後の追加選定でも難しい立場に立たされるのではないか」との見方を示した。

  森氏はGPIFのESG投資は「短期的なアルファ(運用指標に対する超過収益)を追求しているわけでは全くない。今回の3指数は単にローリスク・ハイリターンで選んだのではなく、あくまでESGの要素で考えた」と説明。「ESG以外の要素で過去の実績が押し上げられたなら、そういう要素に焦点を当てたスマートベータの区分で採用すれば良いからだ」と話した。

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