金融機関の不動産融資が過去最高となる中、三菱UFJフィナンシャル・グループは傘下銀行の不動産投資信託(Jリート)向け融資債権の信用リスクを初めて証券化、地方銀行や信用金庫などへ販売を開始した。超低金利で運用難の機関投資家からの関心が高く、MUFGにとっても融資のリスク圧縮につながる。

  三菱東京UFJ銀行は、1兆円規模のJリート向け債権を保有・管理し続けながら貸し倒れリスク相当分を証券化、5月末に第1弾500億円を売却した。投資家への販売を担当した三菱UFJモルガン・スタンレー証券市場商品本部ソリューション部の梅木真一部長は「順調に消化しほぼ完売した」とし、今後も「1回500億円程度で年1000億円の販売」を検討している。利回りなど発行条件は明らかにしなかった。

  日本銀行の異次元緩和を背景に金融機関の不動産融資は昨年、過去最高の約12兆円を記録した。資金流入に伴い都内のオフィスビル価格指数は、安倍晋三政権発足時の2012年から16年には5割近く上昇。東証REIT指数もリーマンショック後の1000ポイント割れから回復、現在は1700ポイント台で推移している。しかし、日銀は銀行の貸し出し姿勢がバブル期以来の積極性を示していることなどについて注意深く点検していく必要があると指摘している。

  三菱東京UFJ銀ストラクチャードファイナンス部の吉澤祐一次長は、リート債権の証券化の狙いについて「リートの市場環境が良い時期に投資家層を広げる」ことを挙げた。Jリート向け融資は年10%程度増加が続く有望な貸出先とする半面、証券化は融資のヘッジや貸し倒れリスクの一部転嫁にもなるとしている。

  梅木氏によると、主な販売先は信用金庫や地方銀行など。地域銀行はマイナス金利による利ざや縮小や地域経済の低迷を背景に収益悪化が続いており、金融庁が6月に集計した地域銀の17年3月期決算概要は、当期純利益が前年同期比15%減少。国債利回りがゼロ近辺で低迷する中、より利回りが取れる商品への選好を強めている。また、地銀にとっては管理が難しいリート関連での運用資産分散化ができる。

  格付投資情報センター(R&I)による初回500億円相当分の格付けは、受益権A号(415億円)がAAA、B号(25億円)AA-、C号(60億円)A+。

リスク移転

  MUFGのリート債権証券化商品について、新生証券の江川由紀雄調査部長は「組成する銀行にとって不動産向けエクスポージャーのリスク移転ができる」と指摘する。日銀が不動産セクターへのエクスポージャー増加をやや警戒し始めている中、「この取引でリートへの貸し出しリスクを減らせる一方、地銀はその分エクスポージャーが増える」点を留意すべきだと話す。

  金融庁は昨年9月のリポートで、増加し続ける不動産向け融資について「今後の動向は注視が必要」と警戒を示した。日銀も4月の金融システムリポートで「不動産関連エクスポージャーの大きい金融機関は無視し得ない影響を受ける可能性もあり、リスク管理の強化を図っていく必要がある」と分析した。

  Jリートの間でも不動産への投資判断に慎重な見方が出ている。森トラストの堀野郷副社長(Jリート運用会社の前社長)は、「値上がりしてきた不動産価格は限界に来ている」と語り、徐々に下落傾向に転じる可能性を指摘する。不動産投資も収益性の低下から慎重化しており、「投資のための借り入れは慎重に行う」と述べた。

  不動産証券化協会によると01年のスタート当初、Jリートの保有資産規模は4000億円弱だったが、今年3月末現在では約16兆円。私募リートは約2兆2000億円に拡大した。

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