東京都議選は2日投開票が行われ、小池百合子知事が率いる都民ファーストの会が第1党に躍進し、公明党などと合わせた支持勢力で過半数を獲得した。自民党は現有議席の半数以下となる大敗で、安倍晋三政権にとって打撃だ。同党は3日午前に臨時役員会を開催し、対応を協議した。

小池百合子都知事(7月2日)
小池百合子都知事(7月2日)
Photographer: Kazugiro Nogi/AFP via Getty Images

  安倍首相は都議選結果について「政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があった」とし、「真摯(しんし)に受け止めなければならない」と語った。「政権奪還した時の初心に立ち返り、全力を傾ける決意だ」とも強調した。3日朝、官邸で発言した場面をNHKが放映した。

  東京都選挙管理委員会によると、都民ファーストが49(現有議席6)、公明党23(同22)、自民党23(同57)、共産党19(同17)、民進5(同7)だった。定数は127。自民党は過去最低の38議席を大幅に下回った。投票率は51.28%で前回の43.50%を上回った。都民ファーストはさらに無所属で当選した6人を追加公認した。

  政治評論家の森田実氏は都議選結果が政権に与える影響について「甚大、深刻といっていい。内閣改造はしないといけないが、それで立ち直るような事態ではない」と指摘。自民党内では来年秋の総裁選に向けて安倍首相を交代させようという動きが「ゆっくりと出てくるだろう」との見方も示した。

  2009年7月の都議選で自民党は10議席を失い、民主党が第1党に躍進。翌8月の衆院選でも大敗し、民主党への政権交代を許した。今回はこの時をさらに下回る惨敗で、政治評論家の森田氏はこのまま衆院選を行えば「自民党は大敗北するだろう」と指摘している。安倍首相は、自民党役員が任期満了を迎える9月までに内閣改造と役員人事を行い、政権の立て直しを図る。 

  二階俊博幹事長は3日午後の記者会見で、「一致団結して安倍首相を支える」と述べた上で、臨時役員会で安倍首相が国民から信頼される政党に立て直したいと発言したことを明らかにした。一方、麻生太郎副総理兼財務相は同日、党内で2番目の勢力となる新派閥「志公会」の結成を発表。麻生氏は会見で、「安倍政権を力強く支えていくことが国益につながっていく」と述べた。

経済政策

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは3日付のリポートで、都議選での自民党大敗は衆院解散・総選挙や安倍首相が目指す憲法改正の国民投票に向けた「大きな逆風になる」ものの、国政の構図は当面変わらないとの見方を示した。

  理由として、自民党内では「有力な対抗馬がおらず、安倍降ろしの風は簡単には吹いてこない」ことや、18年12月の衆院議員の任期満了までに時間があり、安倍首相に「巻き返しの時間がある」ことを挙げた。安倍政権は19年10月に予定されている消費税率10%への引き上げ再延期や、経済対策、「働き方改革」の一環としての賃上げ加速などを進める可能性があると指摘した。

自民への逆風

  「おままごとみたいな大臣を選ぶなと言いたい」ー。台東区で自民党以外の候補者に投票した佐藤益朗さん(67)は、自民党の国会議員や閣僚に問題が相次いで発生していることにいら立ちを見せた。

安倍晋三首相(6月19日)
安倍晋三首相(6月19日)
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  加計学園の獣医学部新設問題などの影響で内閣支持率が急落し、自民党に逆風が吹く中での選挙戦だった。6月27日には、稲田朋美防衛相が都議選の応援演説で自衛隊の政治利用と受け取れる発言をしたことから野党が罷免要求をしたが、菅義偉官房長官は会見でこれを拒む考えを示した。29日には加計学園が下村氏のパーティー券計200万円を購入したと週刊誌が報じた。

  また、豊田真由子衆院議員が秘書に暴行を働いたと週刊誌で報じられ、テレビで豊田氏とされる女性が暴言を吐く音声が繰り返し放映された。

  安倍首相が選挙終盤の1日に秋葉原で行った応援演説では、一部の聴衆から「安倍辞めろ」のシュプレヒコールが上がった。演説が聞こえないほどの大きさとなり、首相が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と声を荒らげる場面もあった。

  これに対し、選挙期間中に約100カ所で応援演説を行った小池知事は、「古い議会を新しい議会に代えるチャンス」と訴えた。足立区や台東区での演説では自民党体質を批判した際には、聴衆から「そうだ」と同調する声も上がった。

  台東区で都民ファーストの推薦する候補者に投票した加藤雅之さん(54)は、当落の「ボーダーラインにいたから」と述べた。「都政に変化が必要」と感じており、都民ファーストの勢力を増やす方が都政への変化が期待できると考えたという。

  品川区の青木隆雄さん(58)は、共産党の候補者に投票した。「自民党も民進党も論外で、都民ファーストは百合子ファーストに過ぎず選択肢がなかった」と語った。

ノーサイド

  小池知事は2日夜の会見で、都議選の勝因は「改革への姿勢、期待を受けての結果」と語った。20年東京五輪・パラリンピックの準備や豊洲移転と築地再開発などの施策を堅実に進めていくと述べた。国政進出の可能性を問う質問には、あくまで都民のために利益を確保するのが目標と語り、明言を避けた。

  墨田選挙区で当選した自民党の川松真一朗氏は、都議選が終われば、「いよいよ東京五輪に向けて協力体制が築けるのではないか」と事前取材で語った。小池知事が誕生してからの1年間は議会運営などを巡り「小競り合い」が続き、「失われた1年間だった」と感じている。

  知事とは16年リオデジャネイロ五輪の際、同じフライトで現地入りし、「東京五輪に向けて、ノーサイドで行きましょう」と握手をしたという川松氏。小池氏の「突破力」には、自民党の地道に政策を積み上げる力が生かせると考えている。
 
  自民党の下村博文幹事長代行は2日、「小池都知事だけで五輪は成功しない。都議会も国も五輪成功に向けて協力していくのは当然だ」とフジテレビの番組で語った。

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