東京都議選は7月2日の投開票を控え、小池百合子東京都知事の率いる「都民ファーストの会」が自民党をリードする展開となっている。結果次第で2012年の第2次政権発足以後、「1強」と呼ばれた安倍晋三首相の政権基盤が崩れる可能性もある。

  「築城3年、落城1日」ー。選挙戦終盤の28日、安倍首相は都内の応援演説で自民党の持つ危機感をこう表現した。09年に下野した時に国民の信頼を失ったことを反省し、新しい自民党に生まれ変わることを決意したと述べ、「あの時の悔しさ、無念さ」を思い起こして戦い抜きたいと訴えた。

  今回の都議選は加計学園の獣医学部新設問題などの影響で内閣支持率が急落した直後に告示され、自民党にとって不利なタイミングとなった。共同通信社が24ー25日に行った世論調査では、政党別投票先として都民ファーストを挙げた人が26.7%と最も多く、自民党は25.9%だった。共産党は13%、公明党は12.3%で、調査時点で「投票先をまだ決めていない」とした人は57.2%だった。

  政治評論家の有馬晴海氏は、今までは安倍自民党に代わる存在がなかったが、小池氏率いる都民ファーストが受け皿になると状況は変わるとコメント。国政レベルでも小池氏寄りの議員が増えてくると今後の政権運営は「厳しいかもしれない」と電話取材に述べた。

  都民ファーストは、小池氏の改革理念に賛同する「希望の塾」の出身者を中心に50人(現有議席6)の公認候補を擁立。協力関係にある公明党公認の23人(同22)を含めて推薦を出した候補者計85人全員の当選を狙う。自民党は60人(同57)、共産党は37人(同17)、民進党は23人(同7)を公認した。

稲田防衛相発言

  自民党に対する逆風は23日の告示後も続いている。27日には稲田朋美防衛相が演説で、自民党候補への応援を防衛省、自衛隊としてもお願いしたいと発言。その日のうちに撤回したが、自衛隊の政治利用とも受け取れると批判され、野党側は同氏の罷免を要求している。

  下村博文幹事長代行(都連会長)は5月のインタビューで「都議選の結果はその後の国政に直結している」と今後の政権運営に与える影響を懸念していたが、6月29日には加計学園が自身のパーティー券計200万円を購入したと週刊誌が報道。同氏は会見でこれを否定し、記事は「選挙妨害と受け止めざるを得ない」と述べた。

争点

  自民党は都内各地の演説会場で、都議選で問われているのは生活に影響する身近な政策だと強調。政治経験のない都民ファースト候補者の政策実行能力に疑問を呈している。安倍首相は28日、家族連れが目立った台東区の演説会場で、子育てのしやすい町づくりなど地域の課題を解決し、「政策を前に進めることができるのは国とも連携ができる自民党」だと訴えた。

  対する都民ファーストの会は都議選争点に情報公開と行政の透明性を掲げる。幹事長の野田数氏は、地下の無害化もしないまま強引に豊洲移転を推し進め、東京五輪の費用管理もできていなかったのが都議会自民党だとした上で、国政でも自民党は情報公開とは逆方向に進んでいると批判。「われわれは何が起きているか真実を訴えれば勝てる」と自信を示した。

  加計問題では、国会閉会後も政権側に説明責任を問う動きは収まっていない。文部科学省の前川喜平前事務次官が告示日の23日に都内で会見し、「行政がねじまげられた」と主張。民進、共産など野党4党は臨時国会の召集を求める要求書を衆参両院に提出した。

  麻生太郎内閣への批判が高まる中で行われた09年7月の都議選では、自民党が10議席を失い民主党が都議会第一党に躍進。翌8月の衆院選で自民党は大敗し、民主党に政権を譲った。第2次安倍政権発足後の13年6月の都議選で自民党は59人の候補者全員が当選した。

ねじれ

  東京大学大学院総合文化研究科の内山融教授は、都議選の特徴の1つとして国政との「ねじれ」を挙げる。

  与党として安倍政権を支える公明党は、都議選では都民ファーストと連携し、候補者は都民ファーストの推薦を受けている。ウェブサイトに小池知事による同党候補への応援演説の動画を掲載。山口那津男代表は街頭演説などで、公明党は小池知事とともに改革を進めると訴えている。

  内山氏はまた、安倍首相と小池知事との関係は悪くないと指摘。都議選の結果によっては、憲法改正への道が険しくなると予想されることから、都民ファーストが国政に進出した時は安倍首相が小池氏側を改憲勢力として取り込む可能性もあると指摘した。

  安倍首相は28日の応援演説で、小池知事について「新風を吹き込んだことはよかった」と評価した上で、選挙後は東京五輪の成功に向けて「しっかり協力すべきはするのが当然」と述べた。

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