テクノロジー株に集中していた米国株の投資動向に変化が生じている。きっかけの一つは、価格モメンタム(勢い)で構成ウエートが変わる指数連動型上場投資信託(ETF)の存在だ。5月末の定期見直しで金融セクターの比率が急増し、米金融株の巻き返しが日本株にも波及し始めた。

  モメンタムが相対的に高い米国の中・大型株で構成される「iシェアーズ・エッジMSCI米国モメンタム・ファクターETF」は、世界的な株価指数算出会社のMSCI米モメンタム指数に連動している。同指数の定期リバランスは5・11月末の年2回行われ、今回の5月末は金融セクターのウエートが23.2%と、それまでの3.6%から大きく高まった。ブルームバーグ・データによると、今月29日時点では24.5%となっている。一方、5月末の見直しで情報技術は40.8%から32.6%、生活必需品は8.8%から1%、公益事業は7.2%から0.3%に減少した。

ウォール街標識
ウォール街標識
Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  良好な景気や企業業績への評価から、米国株は昨年2月を直近の大底に上昇を続けており、S&P500種株価指数は19日に一時2453.82と史上最高値を更新した。特に、ことしの相場を引っ張ってきたのはフェイスブック、アマゾン・ドット・コム、アップル、ネットフリックス、グーグルを傘下に置くアルファベットなど「FANG」と呼ばれるテクノロジー株で、実際1ー5月はホームエンターテインメント・ソフトウエア、半導体製造装置、コンピューター電子機器が軒並み4ー5割上昇、同期間のS&P500の7.7%を超過し、上昇率上位を占めた。

  ところが、6月月間のパフォーマンス(28日現在)をみると、消費者金融が8.7%高、資産運用・運用管理7.4%高、投資銀行・証券会社7.4%高、銀行7.1%高とS&P500の1.2%高を上回る半面、半導体製造装置は6.5%安と下落率上位に並ぶ。こうした流れは日本株市場でも起きており、1ー5月は7.1%安で下落率3位だった銀行は、6月に入り8.5%高の上昇率2位と一変した。

  東海東京調査センターの仙石誠マーケットアナリストは、「米国では金融が買いやすいセクターに変わってきている」とし、日本の金融株もグローバルなアロケーション(資産配分)変更の影響を受けるとみる。また、連邦準備制度理事会(FRB)が実施した米大手銀行のストレステスト(健全性審査)で34行全てが最低基準を上回ったほか、シティグループやJPモルガン・チェースが自社株買いなど株主還元策を発表した点に言及。米銀行株のバリュエーションが切り上がれば、日本の銀行株の相対的な割安感も顕著になると予想した。

  りそな銀行の戸田浩司チーフ・ファンド・マネジャーも、「5月まで小型株や安定成長株が強い動きだった。しかし、6月に入り少し過熱感があるのではないかとの警戒が出た」と指摘。きっかけがあれば、資金を少しシフトさせようと投資家が感じていたところで、「米金利のちょっとした動きを材料に金融などバリュー系への資金シフトが起きている」とみる。

  「iシェアーズ・エッジMSCI米国モメンタム・ファクターETF」の発行済み口数は3500万口と昨年末から4割増加、6月以降でも16%増えた。年初来のトータルリターンは19%で、ブルームバーグが抽出する同カテゴリーのETF179本の9割以上に対しアウトパフォームしている。

  30日の東京株式相場は米テクノロジー株の下落を嫌気したリスク回避の売りで、日経平均株価は19日以来、一時2万円を割り込んだ。こうした厳しい状況でも、東証1部33業種で銀行、保険は小幅ながら午前をプラス圏で終了。モルガン・スタンレーMUFG証券は30日のリポートで、株主還元を発表した一部米銀大手でサプライズが大きい結果となり、このポジティブな反応が邦銀株にも波及する効果が期待できる、との見方を示している。

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