東京外国為替市場では欧州通貨が上昇。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁に続き、英中銀イングランド銀行(BOE)のカーニー総裁からも金融緩和策の縮小に向けた発言があったことを受けて、ユーロやポンドへの買いが優勢となった。ユーロは対ドルで約1年ぶりに1ユーロ=1.14ドル台を回復した。

  29日午後4時26分現在のユーロ・ドル相場は、前日比0.4%高の1.1422ドル。一時は1.1432ドルと、昨年5月11日以来の水準までユーロ高・ドル安が進んだ。ユーロ・円相場は、0.4%高の1ユーロ=128円32銭。一時128円43銭と昨年2月10日以来のユーロ高・円安水準を付けた。

  ソシエテ・ジェネラル銀行の鈴木恭輔為替資金営業部長は、「ドラギECB総裁、カーニーBOE総裁、ポロズカナダ銀行(BOC)総裁のタカ派発言があり、緩和解除へ向かう通貨について行く動きとなっている。このため、ドルが軟調地合い」と語った。

  カーニーBOE総裁は28日のECBフォーラムでのパネル討論会で、金融政策による景気刺激の解除が必要になる可能性を示唆した。前日にはドラギ総裁が「デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」と発言。また、ポロズ総裁は利下げが「役目を果たした」ようにみえると述べていた。

  ポンド・ドル相場は同時刻現在、0.5%高の1ポンド=1.2987ドル。一時0.4%高の1.2995ドルと1.3ドルに接近し、5月25日以来のポンド高・ドル安水準を付けた。前日には一時1.2%高と約2カ月ぶりの大幅な上昇率を記録した。

  ソシエテ・ジェネラル銀の鈴木氏は、ユーロ・ドルについて「ドラギECB総裁発言を受けて期待先行で水準を上げた」とし、「経済指標の裏付けが必要。今晩のドイツ消費者物価(CPI)、あすのユーロ圏CPIを見極めるムード」と指摘した。ポンド・ドルに関しては、「BOEの早期利上げはないと思っていたが、カーニー発言が本音なら注意深く見極める必要がある。期待が先行し、しばらくこの地合いは続くのではないか」と述べた。

  ブルームバーグ調査によると、6月の独CPIは前月比変わらず、前年比1.4%上昇が見込まれている。5月は前月比0.2%低下、前年比1.5%上昇。JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは、29日付のリポートで、ECBは18年1月にテーパリング開始を予想。同1-3月期に月400 億ユーロ、同4-6月期に月200億ユーロまで資産購入額を減額し、その後購入を終了と見込んでいる。現行は月600億ユーロ。

  ドル・円相場は同時刻現在、ほぼ変わらずの1ドル=112円34銭。朝方に112円43銭まで上昇した後は伸び悩み、午後に入って一時112円14銭まで下落した。

  三菱UFJ信託銀行資金為替部為替市場課の池島俊太郎課長は、「ドル・円はドル売りの流れの中で、クロス円にサポートされている図式。今週はECBやBOE、BOCのタカ派的な発言で緩和政策から正常化への流れが意識されている一方、日本銀行はその方向へのスタンスや時間軸が今一つ明確ではないことが意識されている」と分析。「米10年債利回りも2.25%まで上昇する場面はあったが、政治的な期待が薄い中で調整はあっても大きく金利が上がる感じはしない。ドル・円は上がっても年初高値からのトレンドラインが位置する112円70~80銭辺りがめどになりそう」と語った。

  原田日銀審議委員はこの日、資本市場研究会で講演し、「日銀の国債購入はデフレ脱却と金利低下が目的」と述べ、金融緩和が金利急騰リスクを高める議論に根拠ないとの見解を示した。

ドルと円
ドルと円
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  前日の米国市場で、10年債利回りは2ベーシスポイント(bp)上昇の2.23%程度で終了。一方、米国株は金融株を中心に買いが入り、反発した。

  ソシエテ・ジェネラル銀の鈴木氏は、「トランプ政権の議会運営がうまくいっていないことがドル・円の上値を重くしている」としながらも、「中銀総裁からのタカ派発言でも株などリスク資産は堅調。リスクマインドが大きく揺らいでいないことがドル・円の下支えになっている」と語った。

  29日の米国時間には、1-3月期の米実質国内総生産(GDP)確定値が発表される。ブルームバーグ調査によると、前期比年率1.2%増加と、改定値(同1.2%増加)から変わらずと見込まれている。

  三井住友信託銀行NYマーケットビジネスユニットの矢萩一樹調査役(ニューヨーク在勤)は、目先の注目材料にGDPと30日の個人消費支出(PCE)を挙げ、「弱かったら経済が弱いということで、短期的にはドルが売られるのではないか」と予想。独立記念日明け以降は、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録を挙げ、「緩和縮小、バランスシート縮小の議論がどのくらい出てくるかが一つポイント。しっかり緩和縮小方向を見定めるような内容が出てくると、金利上昇に伴う、ドル上昇となる可能性がある」と見込んでいる。

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