日本たばこ産業(JT)は29日に銀座と新宿に専門店を開店し、都内で加熱式たばこ「プルーム・テック」の販売を開始した。同社独自のアプローチで、加熱式たばこの全国販売で先行した米フィリップ・モリス・インターナショナルの牙城の切り崩しを狙う。

  JTはこれまで福岡市内とインターネットでプルーム・テックを販売してきたが、この2店舗に加え7月10日には都心部6区のたばこ販売店など約100店舗での販売を開始する。7月には英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)もこれまで仙台市に限定していた「glo(グロー)」の販売地域を7月3日に東京と大阪、宮城県内全域に拡大する予定だ。フィリップ・モリスは「IQOS(アイコス)」を2014年に名古屋市で限定販売を開始し、16年に販売地域を全国に拡大した。

日本たばこ産業(JT)の加熱式たばこ「プルーム・テック」
日本たばこ産業(JT)の加熱式たばこ「プルーム・テック」
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  日本は世界の加熱式たばこの主戦場となっており、英ユーロモニター・インターナショナルによると、16年の世界の加熱式たばこの売上高で日本が96%を占めており、18年までに39%の伸びが予想されている。アイコスは発売後2年が経過した今も品薄状態が続いており、国内たばこ市場シェアの10%以上にまで急成長している。

  しかし、フィリップ・モリスやBATが紙巻きたばこの代替として加熱式たばこを提案しているのに対し、JTが目指すのは喫煙者の喫煙室からの解放。臭いの少ない加熱式たばこで、非喫煙者と肩を並べているような状況でも吸えるような製品づくりを目指したという。

  JTたばこ事業本部EPマーケティング部長の藤原卓氏はインタビューで、プルーム・テックを喫煙所内で吸うのであれば「あまりメリットを感じないかもしれない」と述べた。プルーム・テックはたばこ葉を直接加熱しないため、他社製品よりも気になる臭いが少ないという。まずは「いまバトルフィールドとなっている東京でお客様の声をきちんと確認したい」と話した。

たばこ葉を直接加熱しない

  JTの製品は、たばこ葉を加熱する他社の製品とは異なり、液体を含んだカートリッジを加熱して発生した蒸気をたばこ葉に通す仕組み。フィリップ・モリスのアイコスが紙巻きたばこと比べて有害物質を9割減らすと主張しているのに対し、プルーム・テックは99%削減するという。プルーム・テックを試したことがあるというミュージシャンの伊藤卓美さんは、他社製品と比べ「あまりたばこ感がない」と述べた。伊藤さんはアイコスを愛用している。

ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「glo(グロー)」
ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「glo(グロー)」
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  JTのこだわりは、同社の製品展開の遅れにもつながるもろ刃の剣だ。フィリップ・モリスとBATでは既存の紙巻きたばこの製造ラインを、加熱式たばこ用のスティック製造に転用することが可能で、両社は次々に工場の転換や増産を発表している。一方でJTは製造ラインをゼロから作ることが必要。17年末に生産能力が月産2000万パック以上に達する予定で、単純に年間で換算すると48億本。フィリップ・モリスは年間500億本相当を製造する予定だ。

  後発組となるJTとBATは価格面でのアピールをもくろんでいる。JTのプルーム・テックの本体価格は4000円、BATのグローは8000円。フィリップ・モリスのアイコスは旧型が9980円、3月に発売した新型が1万980円だ。BATは東京での発売に合わせて旗艦店などで約3000円の値引きを行う予定。アイコスも同額の値引きキャンペーンを行っている。

8カ月程度で乗り換え

  BATジャパンのピーター・シモンズ副社長は26日の電話取材で、通常の紙巻きたばこでは喫煙者は同じブランドを吸い続ける傾向があるのに対し、「消費者が電子機器を買う行為は少し異なる」と指摘。電子機器では6ー8カ月間で、より優れた新機種に乗り換える傾向があるという。「消費者が次に選択するときに、より多くの選択肢を提供したい」と述べた。

  BATが東京・大手町で開いたグローの発売前体験会に26日に訪れた会社員の安原秀文さんは、アイコスと比べ「味は一緒」だと話す。ズボンのポケットからアイコスの加熱機器を2本取り出し、「充電に時間がかかるので両方を一緒に持ち歩いている」と答えた。グローが発売されたら「乗り換えると思う」と語った。

  BATとフィリップ・モリスによると、東京に先駆けて両社が競合した仙台市では、アイコスの市場シェアが4月時点で15%。16年12月に同市での試験販売を開始したグローのシェアは5月時点で7.6%となっている。

フィリップ・モリス「IQOS(アイコス)」のカラーキャップ
フィリップ・モリス「IQOS(アイコス)」のカラーキャップ
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  フィリップ・モリス広報担当の小池蘭氏は「われわれは新しい市場を作っており、それには良い競争が必要」と話し、競合他社の東京での加熱式たばこ発売を歓迎する意向を示した。

  3社の株式を保有しているアッシュ・パーク・キャピタルのディレクター、ジョン・フェル氏は「早い段階でのアイコスとグローの成功は、加熱式たばこが捉えうる市場に対する期待値を上げた」と指摘。「JTは日本のたばこ市場でとても大きなプレーヤーであるため、新商品で一定のシェアを獲得することが非常に重要だ」と述べた。

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