野村ホールディングスは、国内営業支店における新規上場企業の法人関係情報の取り扱いをめぐり金融商品取引法に違反した問題で、金融庁に法令違反と再発防止策を届け出たことが、複数の関係者への取材で明らかになった。

  野村は全国158支店で、営業社員による投資家対応などのモニタリングを充実させるほか、支店長に新規株式公開(IPO)直前研修を実施するなど、法令順守体制を強化する。支店長は株式売買委託などの営業と、各地域内での企業金融ビジネスのトップを兼務していることから、法人関係情報を厳格に管理し再発防止に努める。事情に詳しい関係者が、情報が非公開だとして匿名で明らかにした。

  法人関係情報とは「公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるもの」で、金融商品取引法40条では、証券会社は業務上知り得た法人関係情報の管理について、インサイダー取引に利用されないよう必要かつ適切な措置を講じるよう求めている。

  関係者によれば、金融庁は野村の報告を精査する方針で、証券取引等監視委員会はさまざまな情報を収集した上で調査の必要性を判断する。野村の山下兼史広報担当はコメントを控えた。金融当局の幹部も個別の事案には言及しないとしている。

  野村HD株は27日一時2.4%上昇し、1%の675.1円で取引を終えた。日経平均株価は0.4%上昇した。SBI証券の藤本誠之シニアマーケットアナリストは、再発防止策や法令順守体制の改善策の届け出により、「IPOなどの引き受け業務がしばらくできなくなるリスクを回避できそうだ」との安心感が投資家に広がっていると分析した。

モニタリング調査

  野村は4月、宮崎支店のモニタリング調査を実施、当時の支店長や営業社員らへの聞き取りや、顧客との会話録音を調べた結果、法令違反の可能性があることが判明した。

  前宮崎支店長は、同社が上場主幹事を務めたコインランドリー運営会社のWASHハウスが株式分割の検討に入るとの法人関係情報を1月下旬に取得、2月中旬のミーティングで、営業社員に株式分割の可能性に言及したという。社員は一般論として株式分割が期待できるとして、買い付けの勧誘を3月10日の正式発表まで継続して行っていたもよう。ブルームバーグ・ニュースはこの経緯を今月初旬、複数の関係者への取材をもとに報じた。

  WASHハウスの児玉康孝社長は、2月14日に開催された決算説明会で、具体的な株式分割の計画については触れずに、「機関投資家がどういう要望を持っているか、ある程度理解している」と述べ、「流動性の問題など、いろんなことをしっかり社内で検討しながら対応していく」と語った。

  関係者によれば、前支店長は翌15日の営業部員との朝のミーティングで、前日の説明会での社長の発言を紹介、株式分割の可能性について言及したとみられる。WASHハウスの株価は14日に8.2%、15日は8.5%上昇した。

チャイニーズ・ウォール

  野村の社内規定では、企業の内部情報を知り得る立場にある支店長は、上場企業については支店内においても一切言及できないことになっている。今回の社内調査では、前宮崎支店長が他人に利益を得させ、または損失を回避させるためにインサイダー情報を伝達したり売買推奨をした行為は認められなかったという。

  野村HDは社内調査の結果、証券会社として法人関係情報の管理に不備があり、不適切な行為を防ぐ体制ができていなかったため法令に違反したとの結論に達した。金商法を実施するための内閣府令123条では、不公正な取引を防止するための措置が定められている。  

IPO主幹事ランキング

  ブルームバーグの集計によれば、野村は2016年度、日本企業関連のIPO主幹事ランキングで首位に立った。大和証券グループ本社やSMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券など、証券各社はIPOに力を入れていて、東京以外に本社を置く発行体の上場も積極的に行っている。

  宮崎県の企業が株式上場を果たすのは、旧日興シティグループ証券が04年に主幹事を務めたコスモス薬品以来12年ぶり。野村が宮崎県の企業の上場主幹事を務めるのは1990年以来初めてで、WASHハウスの上場は同支店にとって重要案件の一つだった。

英語記事:Nomura Said to Bolster Compliance After Japanese Law Breach (1)

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