米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、電気自動車(EV)の生産台数目標である年間50万台の達成時期を前倒しすると発表した昨年5月、大阪市に本社を置く化学メーカー、ステラケミファの株価が4営業日で33%余り上昇した。

橋本亜希社長
橋本亜希社長
Source: Stella-Chemifa Corp.

  ステラケミファは、車載用の高純度リチウムイオン2次電池用の電解質を製造する世界でも数少ないメーカーの一つ。リチウムイオン電池は正極、負極、セパレーター、電解液によって構成され、粉末状の電解質を溶媒に溶かすと電解液となる。テスラの計画に加え、中国が、ガソリンをほとんど、あるいは全く利用しない自動車の普及を通じて温室効果ガスの削減を目指していることから、ステラケミファの株価は過去2年間に2倍以上に上昇している。

  ステラケミファの橋本亜希社長(43)は、曽祖父が101年前に創業した同社の本社でのインタビューで「需要と供給が釣り合っていない。求められた量を必死に作っている状況だ」と語る。

  同社の事業のうち電池事業は昨年度の年間売上高299億円のうち約17%を占める。最大の割合を占めるのは半導体・液晶製造用の化学製品だが、昨年度は電解質の売上高が70%増加した。

楽観視せず 

  岩井コスモ証券の有沢正一・投資調査部長は、ステラケミファの株価が2015年以降、上昇していることについて「全体として上げ基調は電池材料への期待からだ」と指摘。「自動車向けの市場は新参者にとっては極めて参入しにくい。自動車メーカーに製品がいったん採用されると、ずっと利用し続けてもらえる可能性が高い」と述べた。

  橋本氏はイタリア料理のシェフとして修業し、レストラン経営を経て5年前にステラケミファに入社、15年初めに社長に就任した。同社の株式の4.1 %を保有している。株価が上昇しているにもかかわらず、あまり楽観的な見方はしていない。

  「曽祖父、祖父が作ったものを地道に保守的に引き継いでいきたい」と語る。

  橋本氏は、市場を読むのがいかに困難かを認識している。ステラケミファは、10年に発売となった日産自動車の新型電気自動車「リーフ」のヒットを期待して生産能力を拡大したが、見通しは外れ、工場は半遊休状態となった。13年には中国の新興企業との競合激化で電解質価格が下落。状況はさらに悪化した。 

方向転換

  ステラケミファと競合する非上場の森田化学工業の堀尾博英・常務取締役は、昨年の一時的なバブル状態を経て、価格は下落すると予想。中国では約6社が電解質を生産しており、品質も追い付きつつあると指摘する。「5年くらいのスパンで予測が立てられるような産業になっていない。2-3カ月で方向転換しないと、そのころには全く違う状況になっている」と話す。

  国際エネルギー機関(IEA)によると、昨年時点で世界のEV数は約200万台。10年には2万台を下回っていた。EV、ハイブリッド車、燃料電池車を合わせた年間販売台数は25年までに中国だけで700万台に達すると予想されている。

  東海東京調査センターのシニアアナリスト、中原周一氏は「中国が国策として明確にEVの普及を推進する方針なので安心感がある」との見方を示した。一方、名古屋大学客員教授の佐藤登氏は、EVにはまだ開発の余地があると指摘。「航続距離は短いし、充電時間も長い。消費者が率先して買う車ではない」と述べた。

原題:Tesla Effect Boosts Shares of Little-Known Lithium Salt Supplier(抜粋)

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