エアバッグの大規模リコール問題に直面していたタカタは26日、民事再生手続き開始を東京地裁に申請し、受理されたと発表した。日本の子会社2社と海外子会社12社も法的整理にする。納入先の自動車メーカーや原材料を仕入れる下請け企業などへの影響を最小限に抑えて再建を目指す。国内製造業の破綻では最大規模になる可能性がある。

  タカタの26日の発表資料によると、同日開催の取締役会で民事再生手続き開始の申し立てを決議し、東京地裁に申し立て、受理された。地裁は弁済禁止の保全命令、監督命令を発令し、宮川勝之弁護士を監督委員に選任した。連結子会社のタカタ九州とタカタサービスについても申し立てたほか、米国法人を含む海外子会社については米国連邦倒産法第11章の再生手続き開始を連邦破産裁判所に申し立てた。

滋賀県にあるタカタ工場
滋賀県にあるタカタ工場
Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg via Getty Images

  タカタは経営難に陥って以来、1年以上にわたって再建策を模索していた。タカタの依頼していた外部専門家委員会が出資者(スポンサー)の最有力候補に推薦していた中国系の米自動車部品メーカー、キー・セーフティー・システムズ(KSS)のもとで事業再建を図る。

  タカタはKSSと総額約1750億円の事業譲渡で基本合意した。全世界で保有する実質的に全ての資産・事業を譲渡する。タカタとKSSの事業を実質的に統合することで、世界23カ国で展開し、従業員約6万人の自動車安全部品会社が誕生する。従業員の雇用は維持するという。

  民事再生手続きでは、債権者説明会を東京で28日、滋賀で30日、佐賀で7月3日に開催する。地裁の再生手続き開始決定は28日の見通し。

交渉不調で私的整理断念

  タカタの高田重久会長兼社長は都内で開いた会見で、「全ての関係者にご迷惑をかけ、心より深くおわびする」と頭を下げた。自動車メーカーなどと再建を目指して協議してきたが合意に至らないまま米当局から罰金を科され、人材は流出、取引先の姿勢も厳しくなる中、資金繰りが持たなくなるなどで法的整理の再建を目指すこととなったと説明。「適切な時期に責任を取って辞任する」と話した。KSSとの最終合意や自動車メーカーなどと最終調整に至っていないとし、こうした問題に対応して、次の経営陣を招聘(しょうへい)できると語った。

会見で頭を下げる高田重久氏と須藤弁護士
会見で頭を下げる高田重久氏と須藤弁護士
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  タカタから再建策の取りまとめを依頼されていた須藤英章弁護士は会見で、日米以外の欧州・アジアでは私的整理で再建を図ると話した。

  タカタは債権者の合意を得た上で裁判所の管轄外で再建を目指す私的整理を望んでいたが、高田氏は「時間を重ねて協議を重ねたが、世界各国の10社以上の自動車メーカーとの間で合意に達するのは極めて困難」と感じるようになったという。須藤氏によると、自動車メーカーからは銀行や社債権者などを公平に扱わずにリコール費用だけを大幅カットするのは自社の株主に説明がつかないと指摘され、全員の同意を得る私的整理は極めて難しいと思うようになったという。

  今月16日には、タカタの民事再生方針を日本経済新聞が報道。須藤氏によると、多くの金融機関がこれ以上の返済延長はできないと通告し、預金の出し入れがなかなか自由にできなくなったという。サプライヤーからも前払いでの納入を求められるようになり、高田氏は「このままでは資金繰りも持たず、製品の供給ができなくなるリスク」が生じたために法的整理を受け入れる考えに傾いたと説明した。

  タカタは発行済み社債3本の取り扱いについて、再生計画案で決めることになり、現時点で最終的な取り扱いは確定していないとし、社債の債権者集会を開催する予定はないとした。株式についても再生計画案で定めることになり、最終的な取り扱いは確定していないという。

負債総額1兆円超も

  NHKによると、取引先の自動車メーカーが肩代わりしているリコールの費用を含めたタカタの負債総額は1兆円を超えているという。東京商工リサーチは負債総額について、15社分の3月末の合計約3800億円のほか、自動車各社が負担しているリコール費用総額が1兆3000億円とみられ、これらを負債に含めると約1兆7000億円と見込まれるとした。

  小林信明弁護士は会見で、負債総額は今後の再生手続きの中で決まるとし、1兆円を超えるかは概数としても認識していないと話した。帝国データバンクの調べでは、これまで製造業の過去最大の倒産は、昨年11月のパナソニックプラズマディスプレイの特別清算で負債約5000億円だった。

  主要取引行の三井住友銀行は同日、タカタの民事再生手続き開始の申し立てを受けて、総額250億円を上限とするDIPファイナンスを提供(コミットメントライン設定)すると発表した。世耕弘成経済産業相は記者団に、タカタの法的整理について、やむを得ない措置と述べ、取引先や中小企業への資金繰りに万全を期してもらいたいとの考えを示した。

主要自動車会社が引き当て

  タカタの主要取引先であるホンダは同日発表の資料で、リコール費用負担について、一部を除き合意に至っていないとし、今回の法的手続きの中で求償すべき費用を引き続き主張していくが、求償権の大部分は回収が困難となる見込みとした。ホンダでは貸倒引当金に計上済みのため、今期業績への影響は限定的とみている。

  トヨタ自動車も発表資料で、リコール作業を進めており、求償権などが発生しているとし、今回の法的措置で取り立て不能・遅延の恐れが出てきたとした。リコール費用に関する求償権などは5700億円で、引き当て済みのため業績への影響は軽微という。今後も安定的に部品供給を受けるよう最大限の努力をするともしている。日産自動車も発表資料で、リコール費用の求償権の大部分が取り立て不能になることが見込まれるとし、リコール費用については適切に引き当て済みとした。

  ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真最高経営責任者(CEO)は、タカタの法的整理について、金融市場では織り込み済みとみている。中小取引先への影響については、経産省が支援を表明しており、「混乱が起こるということは考えていない」と話した。社債について、問題は弁済率がどのくらいになるかだと指摘し、社債価格が額面の2割程度まで落ち込んでおり、それよりも大幅に減ると「社債の保有者には悪影響が出てくる」と語った。

  タカタ製エアバッグではインフレータ (膨張装置)が異常破裂する恐れがあり、米国を中心に死傷者も出ている。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2015年11月に同意指令を発表し、タカタが硝酸アンモニウムを使用したインフレータの生産・販売を段階的に停止することなどで合意。国内外の自動車メーカーは搭載車のリコールを拡大しており、対象品は1億個規模に上るとみられ、対策費は暫定的に自動車メーカーが負担している。タカタは前期決算で3期連続赤字となった。

  今年1月には、タカタが米司法省と総額10億ドル(約1100億円)の司法取引で合意していた。内訳は自動車メーカーに対する報告での通信詐欺罪の罰金2500万ドル、被害者への補償基金1億2500万ドル、自動車メーカーへの補償基金8億5000万ドルとなっていた。  

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