ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは、政府はサービス残業の実態把握と削減に取り組み、日本の生産性を高めていくべきだと考えている。消費を活発化させる効果もある。

  馬場氏は21日のインタビューで、サービス残業を削減すれば「レジャーや消費活動に人々はより向かえるようになる」と話した。

  労働力人口が減少し続ける中、生産性の向上は日本経済にとって喫緊の課題。政府が3月に公表した「働き方改革実行計画」では、長時間労働の是正は女性や高齢者の労働参加を後押しするとしている。消費への波及を狙い、月末の金曜日に早期退社を促すプレミアムフライデーも始まった。

  政府は3月、時間外労働は原則として月45時間としたが、厚生労働省の毎月勤労統計調査(確報)によると、賃金の支払われた4月の所定外労働時間は11.4時間にすぎない。総実労働時間は148時間。馬場氏は、新ルールが順守された場合も残業代が削られることにはならないだろうと話す。

  馬場氏によると、1人当たりのサービス残業は年間200時間程度に達する。事業者が賃金の支払い対象となった労働時間を報告する毎月勤労統計では2016年の労働時間は1724.4時間、労働者が就業時間を報告する総務省労働力調査では1931.5時間になっている。

  長時間労働やサービス残業は、電通の新入社員の自殺やヤマトホールディングスで未払い残業が発覚したことなどで表面化し、問題となった。人手不足に直面するヤマトは、健全な労働環境を守ることを理由に27年ぶりの運賃値上げ方針を表明した。

覚悟する時期

  世界市場での競争を背景に効率化を進めてきた製造業に比べ、中小のサービス業では情報技術などを活用して生産性を改善する余地が残されている。馬場氏も物流などのサービス業で状況は特に深刻だとみており、改善のための政府による情報提供も「相当程度できる」と述べた。

  馬場氏は、労働時間短縮への取り組みは、企業にとって生産性向上のきっかけになると説明。団塊の世代退職後、女性の活躍で人手不足を補えるとは限らず、企業は「覚悟をしないといけない時期」だとした上で、「今から企業体として日本で存続するなら何かを考えないといけない」と述べた。

  馬場氏は、1992年に日本銀行入行。2001年から07年まで主に金融市場局で市場分析を担当し、資金債券担当統括などを歴任した。11年から現職。

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