トランプ米大統領就任の余波、そして、欧州の政治イベントや米国の2回の利上げを乗り越えた2017年前半の為替相場。年後半の相場のテーマは主要国の金融緩和からの出口政策となりそうだが、市場関係者が語るシナリオから浮かび上がるのは、ドルが引き続き苦戦する姿だ。     
  
  「年後半はドルが恐らく一番弱い」。JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉為替調査部長は、日欧の金融政策がすでに正常化の課程にある米国と同じ方向に向かう見通しを背景に、「対ドルでユーロと円は上昇しやすい状況になってくる」とし、年末に1ユーロ=1.15ドル、1ドル=105円までドル安が進むとみている。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は今月、年内あと1回、来年3回の利上げ見通しを維持し、4兆5000億ドルに上る保有証券の縮小計画の詳細を明らかにした。欧州中央銀行(ECB)はフォワードガイダンスから利下げの可能性を示唆する文言を削除した。

  ドルは主要10通貨全てに対して年初から下落。トランプ大統領の政策実行力に対する懸念や米国債利回りの伸び悩みなどが背景だ。ブルームバーグ・ドルスポット指数は年初来5.3%安。ユーロは対ドルで6.2%高と上昇率トップ。円も5.1%上昇している。
 
  HSBC証券は、年末に対円で100円まで、対ユーロで1.20ドルまでドル安が進むと予想。米金融当局が債券再投資の縮小を10月から徐々に進める一方、次回利上げは12月まで実施せず、来年の利上げは1回にとどまると予測する。

  同証マクロ経済戦略部の城田修司部長は、FOMCメンバーの想定よりもかなり緩やかな利上げになることをマーケットが織り込むことで、ドル安に振れやすくなると説明。ECBについては、9月に来年3月までの資産購入の延長と購入額の減額を発表するとみており、出口政策を「市場はまだ100%織り込んでいない」と指摘する。

  日本銀行は先週の会合で長期国債保有残高の増加のめどを年約80兆円とする文言を残したが、実際の買い入れペースは年換算で50兆円程度と80兆円を下回っている。三菱東京UFJ銀行のグローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリストは、年初118円台だったドル・円が110円付近と、「ドル高・円安にいきにくくなっているのは、密やかなテーパリングが随分効いていると思う」と話す。

  三菱東京UFJ銀は、年末のドル・円を107円と予想。瞬間的に104円までドル安・円高が進む可能性がある一方、直接投資を中心とする日本からの対外投資が円高のブレーキとなるとみている。ユーロ・ドルも年末の着地点は1.15ドルで、最大1.20ドルに迫る場面もあるとしている。

  米景気刺激策の遅れやトランプ大統領の保護主義的な貿易政策もドルの見通しを暗くする。CIBC証券金融商品部の春木康部長は、「政策がうまく進まないほど、トランプ大統領から過激な発言がで出るだろう。貿易収支の不均衡を是正するのに一番簡単な方法はドル安だ」と話す。

  ブルームバーグがまとめている為替予測調査では、年末のドル・円の予想中央値は、3月末時点の117円から114円まで下がっているが、それでも足元の水準より3円程度ドル高・円安だ。ユーロ・ドルの年末予想中央値は1.12ドル。3月末時点では1.08ドルだった。

  ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)傘下のナットウェスト・マーケッツのストラテジスト、マンスール・モヒウディン氏は、重要なのは米債利回りの動向であり、「米債利回り曲線をフラット化させることなくFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げすることができれば、ドルはユーロと円に対してアウトパフォームする」と予想。「FRBの布陣がよりタカ派的にシフトする可能性があるということも重要だ」と言う。

  中央銀行の人事をめぐる観測も、年後半の相場の隠れたテーマとなりそうだ。FRBでは来年2月にイエレン議長、同6月にフィッシャー副議長が任期満了を迎える。日銀の黒田総裁の任期も同4月までとなっている。

  三菱東京UFJ銀の内田氏は、「年明け以降はFOMCメンバーががらりと変わる可能性が高く、政策の不連続と米景気拡大から9年目でそろそろピークアウトではないかというタイミングがぶつかることが、米経済にとって年後半の落とし穴になる」と予想。米経済に対する懸念が市場で強まったときに、「『米経済独り勝ち』をテーマにした14年以降のドル高をもう少し吐き出すことになる」とみている。 

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