東芝はメモリー事業売却の優先交渉先に、産業革新機構や米投資ファンドのベインキャピタルなどから成る日米韓連合を選んだ。この陣営の下で東芝メモリはどうなるのか、「日本株式会社」はよく考えなければならない。

  有力な日本勢と組むことがベインに有利に働いたことは明らかだ。だが、売却に抵抗するウエスタンデジタル(WD)や、優先交渉先に選ばれなかったブロードコム、あるいは台湾の鴻海精密工業の方が、戦略的に相乗効果を着実にもたらす合理的な選択肢だったろう。

  半導体を設計したり、エレクトロニクスを実際に製造するこれら対抗陣営に比べ、ベイン陣営が東芝メモリにもたらすことができる内容は乏しいだろう。もちろん、資金提供やさまざまな約束はするだろう。だが、今回の決定に見られるのは愛国主義だ。東芝の発表文がそれを物語っている:

  東芝メモリの「企業価値、国外への技術流出懸念、国内の雇用の確保、手続きの確実性などの観点から総合的に評価し」、この陣営の「提案が最も優位性が高いと評価」した。

  陣営の筆頭に、ベインや日本政策投資銀行を差し置いて産業革新機構の名前が挙がるのは偶然であるまい。同機構はシャープ買収合戦で鴻海精密に敗れた。ここで再び負ければ、機構のみならず日本の政財界(すなわち日本株式会社)にとって屈辱的だろう。

  政府の後ろ盾がある産業革新機構は、一時は別の米投資ファンドのKKRと組むかと思われたが、一部報道によればベインが東芝メモリの経営維持を提案するなどして優位に立った可能性がある。

  発表文には将来の投資や事業拡大、あるいは技術開発支援についての言及がない。半導体生産は非常に金のかかるビジネスだ。競争についていくだけでも毎年、巨額投資を必要とする。ベインはプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社としては世界でも指折りの会社だが、長期視点で投資を続けるのは、通常8年程度で投資を回収するPE投資戦略と相いれないだろう。

  ベインは半導体分野における実績が乏しい。同社はウェブサイト上にテクノロジーやメディア、通信など13社を投資先としてリストアップしているが、その大半がソフトウエア関連だ。半導体やハードウエアは1社もない。

  東芝も日本政府も、投資ファンドと組めば国内雇用確保と技術流出防止に当面役立っても、その継続を可能にするのは絶え間ない投資と業界の相乗効果のみである点を理解する必要がある。

  日本は「日の丸」を維持する急場しのぎの道を選んだのかもしれないが、それは長期的な解決方法を見いだしたことを意味しない。

  (このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Japan Nationalism Wins Toshiba Battle, Loses the War: Gadfly(抜粋)

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