黒田日銀総裁:理論的にはあり得る-2%達成前のETF購入減

更新日時
  • 金融政策は現状維持、長期国債購入めど「80兆円」変わらず
  • 長期金利「0%程度」、短期金利「マイナス0.1%」をいずれも維持

Haruhiko Kuroda, governor of Bank of Japan (BOJ), speaks during the Institute of International Finance (IIF) Spring Membership Meeting in Tokyo, Japan, on Tuesday, May 9, 2017. Over 500 participants from around the globe gather for the 2-day meeting to discuss the critical issues in the financial industry.

Photographer: Akio Kon/Bloomberg
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

日本銀行の黒田東彦総裁は16日の金融政策決定会合後の定例会見で、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ方針について物価目標2%の達成前に購入を減らす可能性について「理論的にはあり得る」との見方を示した。

  黒田総裁は年間約6兆円規模のETFの買い入れについて、「ETFの拡大をした時と、長期国債の買い入れ額を拡大したり、イールドカーブ・コントロールにしたりした時とは必然的に結び付いているわけではない」として、完全にシンクロナイズ(同調)して動く必要もないと指摘。毎回の決定会合で議論していくと述べた。

  一方で、「全体の金融緩和の一環なので、2%の物価目標と離れて、これはこれで違うようにするという考えはないと思う」との認識を示した。

  日銀は同日の決定会合で、昨年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いたほか、長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。

  ETF、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も据え置いた。前会合に続き木内登英、佐藤健裕両審議委員が長短金利操作等の金融調節方針に反対した。

  足元の景気は「緩やかな拡大に転じつつある」との判断を維持した。個人消費は「底堅さを増している」として、4月の「底堅く推移している」から判断を引き上げた。日銀は次回7月19、20両日の金融政策決定会合で経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定し、新たな物価上昇率の見通しを示す。

物価見通しは非現実的

  SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは発表後のリポートで、「非現実的なままの2017年度の物価見通しは、今後の展望リポートの公表のたびに引き下げが繰り返されるだろう」と指摘。日銀が金融引き締め方向へ転じる可能性は「ほぼゼロに近い」としている。

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に5-9日に実施した調査では、全員が金融政策の現状維持を予想していた。黒田東彦総裁の任期中に長期金利の目標を引き上げるという予想は5人と、4月の前回調査から減少した。

ブルームバーグの事前調査の結果はこちら

  米と欧州は金融緩和の出口に向けてかじを切ってきている。米連邦公開市場委員(FOMC)は13、14 両日に定例会合を開き、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標を1-1.25%のレンジに引き上げ、4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても詳細を示した。欧州中央銀(ECB)も8日、金利が現行以下に下がり得るという文言をガイダンスから削除した。

  黒田総裁の任期満了まで1年を切ったが、物価上昇の足取りは重い。4月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比は0.3%上昇、エネルギーを除くと横ばいにとどまっている。一方、日銀の資産規模は前月末に初めて500兆円台に達し、13年4月に量的・質的金融緩和を導入して以降3倍に膨らんだ。資産の膨張に不安の声も強まっており、国会でも出口戦略に関する説明を求める声が出ている。

出口論

  黒田総裁は16日の記者会見で、金融政策運営についての考え方は「日銀の財務面への影響も含めて理解を得ていくのは非常に重要だし、これまで同様しっかり説明していきたい」としながらも、現時点で「シミュレーションを示すことはかえって混乱を招く恐れがあるので難しい」と指摘。財務や収益などの「具体的な数字などで示すことは適当でないと考えている」との見解を示した。

  出口戦略を進める中で日銀の財務が悪化し、赤字に陥る可能性については「いろいろな前提の置き方でそうなり得る」と述べた。その上で、「中央銀行は持続的に通貨発行益が発生する立場なので、長い目で見れば収益を必ず確保できる仕組みになっている」と説明。「短期的な収益の振れがあっても中央銀行あるいは通貨の信認がき損されるということはない」と強調した。

  ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミストは調査で、「不都合な真実」の公表を避けようとすることは、「かえって日銀の信認を低下させる」と指摘。包囲網が徐々に形成されつつあり、「日銀は黒田総裁の任期前に試算を発表するだろう」とみる。

  調査で来年4月8日に任期満了となる黒田総裁の後任候補を聞いたところ、回答した30人のうち、黒田総裁の名前を挙げたのが20人と最も多かった。米コロンビア大学大学院の伊藤隆敏教授、中曽宏日銀副総裁や雨宮正佳理事、前内閣官房参与で安倍晋三首相に経済政策を助言してきた本田悦朗駐スイス大使の名前も挙がった。

  三井住友信託銀行の花田普調査部経済調査チーム長は、黒田総裁の異例の緩和策と連続性を保ち、市場との対話を行いつつ政策運営できるという点で、「雨宮理事が最適ではないか」と分析。一方、「黒田総裁続投、雨宮副総裁というシナリオも有り得る」とみている。

  ドル円相場は会合結果の発表前に2週間ぶりとなる1ドル=111円台を回復した。午後には一時111円38銭まで円安が進んだ。決定会合の「主な意見」は6月26日、「議事要旨」は7月25日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

(11-12段落に黒田日銀総裁の記者会見の内容を追加します.)
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