石で作る「紙」に賭ける起業家、20年までの上場目指す-新興国視野

  • 回転すし首位「スシロー」の全店でメニュー表を採用
  • 石灰石の活用でエコロジーとエコノミーを両立、グローバル展開へ

古代、文字を記録できる道具の一つとして石が使われていた。デジタル革命で紙の未来に暗雲が漂う現在、「石でできた紙」で勝負に挑む日本の起業家がいる。

石灰石を原料とした新素材「ライメックス」で作られた名刺

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  ベンチャー企業TBMが開発・製造するのは、世界的に「ほぼ無尽蔵」の石灰石を原料とした、紙やプラスチックの代替となる新素材「ライメックス」。紙よりも耐久・耐水性に優れ、原料に木を使わず、紙の製造過程で通常大量に消費する水の使用量も非常に少ないため、水資源や森林への環境負荷を低減できる。名刺や飲食店のメニューとして使用されている。

  「何百年も挑戦し続け、残っていくような会社をつくりたい」。山崎敦義社長(43)はブルームバーグの取材で語った。大阪の岸和田市で育ち、中学を卒業後大工に、その後中古車販売を起業。30歳で欧州を訪れ、中世の石造建築が継承される暮らしが当たり前という光景に衝撃を受けた。30代で台湾製のストーンペーパーに出会い、2008年に代理店を設立し輸入を開始。品質やコスト、重さなど多くの課題を抱えていたため、別の製法を試みた。

山崎敦義社長

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  TBMは2011年に設立され、昨年、商業生産を開始した。山崎氏は資金調達の手段として、20年までに新規株式公開(IPO)を目指していることを明らかにした。「しっかりと素材開発が進んで、売り上げと利益が成長していくイメージが自分たちの中で形にできた段階でIPOをやりたい」と同氏。多くの個人投資家や事業会社が株主になっている。

累計1兆円事業へ

  主力商品は名刺で、今年度の売り上げ目標は10億円。山崎氏によると、回転すし最大手のあきんどスシローが今月、同社の全463店舗でTBMのメニュー表を採用した。ラミネート加工が不要で、山崎氏は「現状のものよりも安い価格が実現した」という。園芸大国の欧州向けには、植木鉢に差すラベルの供給について交渉中。実現すれば初の海外契約となる。

  市場では厳しい見方もある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の仲田育弘アナリストは、「紙は安くて売り方が厳しい」と指摘、新興国でも「普通の紙と真っ向勝負するなら、水や省資源というだけではコスト競争力がないのではないか」とみる。さらに、電子化・ペーパーレス化の影響も受けるという。

  山崎氏は、エコロジーというのは、世の中に広まり、当たり前に使われたとき、資源不足対策に貢献できるとした上で、「売り上げイコール貢献の規模となる」と話す。日本で培った技術で、

ライメックスで作られたTBMの製品

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

今後は水不足の国や新興国などをターゲットに海外展開を図る。

  同氏はTBMと製紙大手の事業規模を「アリと象」に例える一方、2035年くらいまでの間に累計1兆円の売上高を目指すと野望を抱く。具体的には、2030年代半ばまでに100基以上のプラントを海外へ輸出し、ロイヤルティー収入など現地の収入と併せて累計で1兆円を得る計画。TBMは宮城県白石市に工場を構えており、20年には同県多賀城市に年産3万トンの工場を新設する予定だ。

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