資生堂は化粧品ブランド「NARS(ナーズ)」を中国市場に投入することを検討している。同国は米国に次いで2番目に大きい海外市場。実店舗の1号店を上海市にオープンさせることを視野に、先行して同ブランドの製品のオンライン販売も始めたい考えだ。ゴールドマン・サックス証券は投資判断を「売り」から「買い」に引き上げた。

  中国ではEコマース市場が前年比2割の成長を続ける中、同社のオンライン販売の売上高は2016年に続き17年も30%超の成長を維持する見通しだと、中国市場の電子商取引(Eコマース)を担当する袁立維氏が14日に電話取材で話した。さらに、中国での売上高に占めるオンライン販売の割合は同年に4分の1に達すると予想する。

  中国で急速に広がりを見せる中間層は、資生堂のEコマース事業を下支えしている。中国国家統計局の調べでは、中国の都市部の1人あたりの可処分所得は15年までの5年間で1.5倍に増え、約3万2000元(約52万円)に達した。消費のプレミアム化が進み、特に若い世代を中心に価格の高い化粧品に人気が集まっている。

  資生堂の株価は、一時前日比で3.9%高の4018円まで買われ、ブルームバーグのデータによると少なくとも1974年以降で最高値を更新した。

  昨年5月に販売支援で提携したアリババ・グループ・ ホールディングのショッピングサイト「天猫(Tモール)」では、提携の前後で資生堂製品の売上高は倍増。さらに、中国の消費データを調査する米サンダルウッド・アドバイザーズによると、高級化粧品ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」のTモール上の月間販売額は、今年5月までの1年間で約1150倍に増えた。袁氏によると、多くの中国人が観光で日本を訪れ、百貨店などで商品に接しブランドへの認知が上がったことなども貢献しているという。

  ゴールドマン・サックス証券の山口慶子アナリストらは、資生堂が「中国人需要獲得の第一人者」だと15日付のリポートで述べ、株価目標を2500円から4600円に引き上げた。「クレ・ド・ポー ボーテ」ブランドの成長の勢いが「非常に強い」としている。アジアで高価格帯ブランドの売り上げ拡大が高水準で推移し、「グローバルな化粧品メーカーの中で最速の利益成長を遂げる」と予想している。

  資生堂はビックデータやソーシャルメディアを活用し、購入単価が高い実店舗と、オンライン店舗の間で相互に送客する取り組みを強化している。テレビドラマで人気の現地女優をソーシャルメディア上の番組に登場させ商品の宣伝を行うなどしている。袁氏によると、有名女優を使ったイベントを催すことで、普段はオンライン店舗で購入しない人も呼び込むことが可能だという。

海外ブランドで3位

  サンダルウッド・アドバイザーズの調べによると、アリババのTモール上では、16年5月までの1年間で資生堂は化粧品販売で仏ロレアル、韓国アモーレパシフィックに次ぐ3位の海外ブランド。上位10位に入った唯一の日本のメーカーで、販売額では米プロクター&ギャンブル(P&G)や米エスティローダーを大きく上回っている。

  オンライン販売で売り上げを伸ばす中で課題も浮かび上がっている。袁氏によると、中国のネット上の顧客は新奇なものに飛びつくのが早い一方で、飽きるのも早く、定着が難しいという。ブランドを継続的に購入する意向を高めることが課題。同社はオンラインと実店舗を合わせて顧客の意向を総合的に捕捉するデータ分析を強化し、自社ブランドへの囲い込みを加速する。

  具体的には、オンラインアカウントの作成時に登録した携帯電話の番号と、実店舗の顧客データ上の携帯電話番号を照合させることで個人単位での購買行動を把握する。何をどこからいつ購入しているかなどのデータを収集し、顧客のニーズに合わせてクーポンをタイミングよく発行するなど新製品の宣伝を効率的に実施できるという。袁氏は、実店舗とオンライン店舗を有機的に組み合わせて商品を販売するために「顧客の購買動向の評価を総合的に行う」と話した。

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