人口減少や省エネルギー化の進展で国内電力需要が縮小する中、東京電力ホールディングスは、海外事業の拡大により企業価値を向上させる方針だ。中部電力との共同出資会社JERA(ジェラ)の海外での発電・燃料事業などを通じた成長を後押しし、福島第一原子力発電所の事故処理費用を捻出することを目指す。投資余力を確保するため、JERAの上場も選択肢に含める。

小早川智明氏

小早川智明氏

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  23日の株主総会での承認を経て東電HD社長に就任する小早川智明氏(53)は14日のインタビューで、「国内で新しい価値を見いだしたとしてもエネルギー事業自体は縮小均衡になる」と説明。「アフリカだけでも日本の人口の約7倍の人々がまだ電気のない生活をしており、大きなチャンスがある」と述べ、海外ビジネスの拡大により企業価値を向上させていく考えを示した。

  東電HDは5月、22兆円に膨らんだ福島原発事故の処理費用の捻出に向け新たな再建計画を発表。この計画では、最終的に政府は保有する東電HD株全てを売却し、立て替えている除染費4兆円を回収する方針だ。それを実現するためには、現在約7400億円にとどまっている時価総額を約10倍の7.5兆円に引き上げる必要がある。企業価値向上策の一環として、海外展開の中核的存在であるJERAに対して、今後10年間で4500億円の投融資を予定している。

  小早川次期社長は、海外での権益取得や電源開発事業などに充てる成長資金の獲得のために「聖域は設けない」と述べ、プロジェクトファイナンスの組成に加え、JERAの新規株式公開(IPO)も「選択肢の一つ」との考えを示した。また傘下の東京電力フュエル&パワーが保有するJERA株の市場売却については現時点では考えていないとし、事故処理費用の捻出や収益の状況も踏まえ、大株主の政府や合弁相手の中部電とも協議する必要があると述べた。

環境変化に対応

  東電HDは2016年4月の電力小売り全面自由化以降、100万件以上の顧客を他社に奪われ、16年度の販売電力量は前年度比2.3%減の2415億キロワット時へと4年連続で減少した。小早川氏は電力小売り事業を手掛ける東京電力エナジーパートナーの現社長として、電力販売減に歯止めをかけるためソフトバンクなど複数の異業種との提携を主導。また東電域外では大口需要家を対象とした電力販売で今年度に前年度比約2倍の50億キロワット時を目指す。7月に参入するガスの小売り事業ではプロパンガス会社の日本ガスとも手を組んだ。

  小早川次期社長は、「足元ではエネルギー需要は横ばいから減少局面に入ってきているが、将来は(さまざまな機器をインターネットでつなぐ)IoTの進展や再生可能エネルギー、蓄電池、電気自動車の大量普及といった環境変化が日本でも起こる」との見方を示し、それに対応した省エネ関連ビジネスなどの新事業育成を他電力や異業種との連携でさらに推し進める。

  再建計画に明記された原子力や送配電事業の再編統合については、「私は資本をマージ(統合)する手段だと思っている」と述べ、小売り分野での提携交渉や法人営業で培った経験を生かし、双方がメリットを享受できる内容をあぶり出し、提案していく考え。厳しい事業環境を切り抜けていくための体制づくりを推進することで、国内の既存事業でも収益性の向上を図る。

混成チーム

  特に東電HDの収益を大きく左右する柏崎刈羽原発の再稼働に関しては、東日本大震災後に見直された新規制基準への適合性審査中に防潮堤の液状化懸念や免震重要棟の耐震性不足が発覚。同原発が立地する新潟県の理解も得られていない。小早川次期社長は、課題ごとに部門混成のプロジェクトチームを組み、指揮命令系統や責任を明確化し、これまでのトラブルの元凶となった組織の縦割りや閉鎖性などの問題に対処するという。

  ただ企業価値向上の目標達成に向けては、「国内では限界がある」との認識を示し、JERAが15年の発足以降、米国の発電事業やインドの再生可能エネルギー事業などへの投資を進めてきたことを踏まえ、「JERAのような取り組みで海外で大きく成長していく必要がある」と述べた。

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