吉川洋・立正大学教授は日本銀行の金融緩和が財政規律の緩みにつながっているとした上で、物価上昇2%を中期目標と位置付け、金融緩和の出口戦略の検討を始めるべきだとの認識を示した。

  今年4月まで財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の会長を務めた吉川氏は12日のインタビューで、「成長ファースト、財政再建ネクスト」の安倍晋三政権の経済財政運営は間違っていると批判。長期金利を0%で固定している日銀の金融政策の「副作用でもある。何をやっても金利はゼロ。やっぱり歳出を膨らまそうということになる」と語った。

  デフレについては「今の日本経済の喫緊の脅威だとは思わない」と述べ、「2%の物価目標をいつまでにと強迫観念のように考えるよりは、そういう方向に持っていくという中期目標でよい」と主張。日銀の長期国債購入も年間約80兆円の保有残高増加額のめどを下回っていることから、「日銀は出口戦略を語り始めてもおかしくない」との考えを示した。

  「今の政権は財政に関心がない」と明言する吉川氏は、小泉純一郎政権時に財政再建派と論争を交わした成長重視の上げ潮派の思想を安倍政権が継承しているという。政府が9日決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にも成長で稼ごうとする政権の方針が反映されているとみる。

  方針では、2020年度の基礎的財政収支(PB)黒字を目指す従来の財政健全化目標に加え、経済成長に併せて改善する債務残高対国内総生産(GDP)比の引き下げを欄外の注釈から格上げして並記した。内閣府では25年度まで低下を続けるとの試算を示しており、歳出増への余地を与えたとの見方もある。

財政赤字がリスク

  吉川氏は同方針について「当面PB黒字化にこだわらず、また歳出を増やすと読める」と解説し、「労働市場が超完全雇用の状態でなぜ財政出動なのか」と疑問を呈する。成長にそこまで効果的な歳出は「ない」とも述べた。

  安倍政権下で過去2回先送りされた消費税率10%への引き上げの実現可能性を疑う声も出始めている。吉川氏は14年の消費増税が消費の落ち込みを誘発したとの指摘に「社会保障の将来がはっきりしない不安が世代を超えて日本の家計の重しになっている」と反論。消費増税によって充実する社会保障の中身を説明するのが「政治の役割だ」と述べ、財政再建に向けた増税の重要性を強調した。
  
  吉川氏は「財政赤字の問題はリスクだ。注意深く最悪シナリオを想定しながらやっていく。日本の財政はそれが必要な段階になっている」としながらも、現政権は財政に関心がないと言い切る。「国債市場がひやっとするくらいのことがないとだめなのではないか。今の政権の一つの問題は政治の力、権力がいろいろなことが動かせるという姿勢だが、市場はそうはいかない」と語った。

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