フィリピン政府が7年ぶりにサムライ債の発行を検討している。日本国内での超低金利が長引く中、投資家が利回りを求めて、リスク許容度を拡大。高格付け債券の品薄感もあり、インドネシアや仏クレディ・アグリコルが発行した投資適格のうち低い格付けの債券にも食指を動かしている。
                                
  インドネシアは5月にサムライ債1000億円を起債した。3年債の表面利率0.65%で、スプレッド(金利上乗せ幅)は円スワップに55ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と昨年6月に3年債を発行した時よりも40bp低下したが、それでも需要があった。ムーディーズ・インベスターズ・サービスから投機的等級より1段階高い「Baa3」、フィッチ・レーティングスと格付け投資情報センターからも「BBBー」を取得している。

  インドネシアにとってサムライ債での資金調達コストは米ドル建て債より高いが、同国財務省は電子メールで、資金調達の多様化に必要なコストだとしており、「低金利の中、投資家を満足させるにはプレミアムが必要なことは認識しており、今回の発行条件には満足している」と回答した。

  仏クレディ・アグリコルが今月発行したサムライ債は、発行総額2039億円の半分以上の1252億円がシニア債より格付けの低いBBB格の非優先シニア債で、これまで発行された非優先シニア債で最大規模の発行となり需要を集めた。

  フィリピン財務省の財務担当ロサリア・デレオン氏は7日「投資家基盤を多様化し必要な資金調達を行うため、サムライ債市場に復帰することも含め、コスト効率の高い選択肢の検討を続ける」と述べている。フィリピン政府は2010年に国際協力銀行保証で2020年償還のサムライ債を円スワップに85bp上乗せした表面利率2.32%で発行している。

  パインブリッジ・インベストメンツ債券運用部の松川忠部長は「国内の投資家は、スプレッドがタイトな国内債と比較して利回りが高いサムライ債に食指を動かしている」と分析。「供給が足りていないため、インドネシア債のようにタイトなスプレッドでも発行が可能」と指摘する。

  ブルームバーグのデータによると、今年度に入り13日までの時点のサムライ債発行総額は3839億円で、前年同期比で14%減少した。 昨年度の発行額は1兆8000億円で、この4年間で最低だった。高格付けの海外発行体にとって、サムライ債で調達した円を外貨に替えるコストを加味すると、欧米市場の方がサムライ債より低コストで調達可能だ。例年5月にサムライ債を起債してきたAA格級の蘭ラボバンクは今年は鳴りを潜めている。

  野村証券シンジケート部エグゼクティブ・ディレクターの五十嵐晃洋氏は「日本の投資家は海外の発行体の信用格付けにとても慎重だった」と話し、今では発行の少なくなっているAA格など、以前は高格付け銘柄しか投資はしなかったという。ただ、マイナス金利の環境では「投資対象となる格付けの幅を広げるなど投資スタイルを変えざるを得ない」と指摘する。

  フィリピンの格付けは、7年前にサムライ債を発行して以来S&Pが4度格上げし現在はインドネシアより1段階高いBBBとなっている。五十嵐氏は格付けの低い銘柄に「投資家もオープンになっており、フィリピンが将来サムライ債で起債する場合は保証なしで可能ではないか」とみており、今後は他のアジア諸国からのサムライ債発行が増える可能性があるという。

  インドネシア財務省は「資金調達の多様化にとって日本は重要な市場で、定期的にサムライ債を発行したい」との考えだ。

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