日本銀行の黒田東彦総裁の後任人事は、同総裁が再任されるとの見方が強まっている。ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に行った調査で明らかになった。

  5-9日に実施した調査で次期総裁候補を聞いたところ、回答した30人のうち、黒田総裁の名前を挙げたのが20人と最も多かった。15、16両日の金融政策決定会合は43人全員が現状維持を予想。黒田総裁の任期中に長期金利の目標(10年物国債金利がゼロ%程度)を引き上げるという予想は5人と、4月の前回調査から減少した。

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  黒田総裁は来年4月8日に任期満了となる。2013年3月の就任以降、長短金利操作付き量的・質的金融緩和などを導入し2%の物価上昇を目指してきたが、達成できていない。菅義偉官房長官は7日の衆院内閣委員会で、後任はデフレ脱却に理解のある人物がふさわしいとの見解を示している。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは調査で、「再任の可能性が現時点で6割以上」と予想。本人が固辞するなどして交代の場合は、米コロンビア大学大学院の伊藤隆敏教授が最有力という見方を示した。

  JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは、黒田総裁を候補の筆頭に挙げた上で、日銀の雨宮正佳理事の可能性もあると予想している。調査ではこの他、中曽宏日銀副総裁や前内閣官房参与で安倍晋三首相に経済政策を助言してきた本田悦朗駐スイス大使の名前も挙がった。

足取り重く

  黒田総裁の任期満了まで1年を切ったが、物価上昇の足取りは重い。日銀の資産規模は前月末に初めて500兆円台に達し、13年4月に量的・質的金融緩和を導入して以降、3倍に膨らんだ。資産の膨張に不安の声も強まっており、国会でも出口戦略に関する説明を求める声が出てきた。

  黒田総裁は5月10日の衆院財務金融委員会で出口における日銀の財務面への影響の試算の公表を求められ、「慎重に検討したい」と答弁。岩田規久男副総裁は8日の参院財政金融委員会で、「財務面に及ぼす影響も含めて分かりやすく説明することは説明責任の観点から重要」と述べた。

  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは調査で、黒田総裁らの発言は「出口戦略を具体的に話すことは時期尚早」と言い続けてきた従来の姿勢からの変化を示唆しているとみる。黒田総裁の任期中に「いくつかのシナリオに基づく試算が示される可能性は高まった」という見方を示した。

  マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストも、黒田総裁が再任されないのであれば、「『やりっ放し』状態で任期を終えた場合、結局何にも達成できなかったというそしりを受けかねない」と指摘。いくつかの施策については「出口を見据えた方向性を示す」と予想する。

追加緩和も

  調査では物価目標2%まで距離がある状況で、出口戦略を示す可能性は低いという声も目立った。4月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比は0.3%上昇、エネルギーを除くと横ばいにとどまっている。

  法政大学大学院の真壁昭夫教授は、物価上昇率が安定的に2%超になるまでマネタリーベース拡大を続けると約束している以上、出口戦略を議論するのは「整合的ではない」と指摘。世界経済の情勢次第で「追加緩和を余儀なくされる可能性もある」とみる。

  クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、インフレ率が上昇しない背景の分析を優先すべきという考えだ。2%物価目標の非現実性や副作用を「国民や国会の納得のいく形で語ってこそ、出口に向かうことができると考えるのが筋だろう」としている。

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