コミー前米連邦捜査局(FBI)局長が上院情報特別委員会で証言した。2つのことに留意するのがよかろう。一つはコミー氏が述べている状況が正常ではないこと。もう一つはこの状況が長く続くということだ。

  前日に公表された書面での証言には、2016年の選挙にロシアが干渉した疑惑を巡る捜査について、トランプ米大統領とコミー氏の間でかわされたやりとりが明らかにされている。大統領はコミー氏に対し再三にわたって忠誠心を要求し、自分が捜査の対象ではないことを公に示すよう求めるとともに、国家安全保障担当の大統領補佐官だったマイケル・フリン氏に対する捜査をやめるよう示唆した。コミー氏はこれらに応ぜず、大統領にFBI長官職を解かれた。

  一見これもトランプ大統領によくある、不適切ではあるが厳密には違法とは言えないかもしれないケースの一つのようだが、大局的にみるとそれだけでは済まされない状況が見えてくる。

  第一に、法務執行のトップに対して自分の政権メンバーに関わる捜査を放棄するよう圧力をかけるのは、間違いなく権力の乱用と受け止められる。忠誠を誓うよう強制するのは法の支配を軽視していることの表れだ。

  こういうやりとりはパターン化されている。報道によれば、大統領はコーツ国家情報長官やロジャーズ国家安全保障局(NSA)局長、ポンペオ中央情報局(CIA)長官に対しても似たようなことを要求している。

  コミー氏の証言内容が真実であり、同氏の信用が大統領よりも高いと判断されれば、議会には大統領を正式に問責する権利が生じる。それでもまだ、ロシアの選挙干渉をめぐる疑念は晴れず、トランプ氏がこれほどまでにしつこく捜査終了を求めている理由は明かされない。

  大統領はこれまで、ロシアに対する捜査は意味がないと主張している。ロシア干渉の目的はトランプ氏を勝利に導くことだったと米情報当局が結論づけたのが、その主張の理由かもしれない。FBIがトランプ氏の側近とロシア当局者とのつながりを調査しているのも原因と考えられる。それとも、ほかに理由があるのだろうか。

  ここで究極的な懸念が生じる。トランプ氏とロシアの関係については不可解な点が依然として多い。トランプ政権はあらゆる反対を押し切って、対ロ制裁の解除を推進している。大統領の娘婿でシニアアドバイザーのクシュナー氏は、ロシア高官らと非公開の会合を重ね、クレムリンとつながる秘密回線の設置を試みたこともある。トランプ氏自身もロシア式プロパガンダに倣い、プーチン大統領をおおげさに称賛してみせ、大統領執務室でロシア政府高官らに機密情報を提供し、楽しげに談笑している様子を写真に撮られている。

  議会にはこの件を追及し続ける責務がある。FBIは違法行為の有無で結論を下さなくてはならない。そして大統領は何をするべきなのか。どんなに気にくわなくてもこうした捜査が続くことを、トランプ氏は受け入れなくてはならない。

原題:As James Comey Testifies, Remember the Bigger Picture: Editorial(抜粋)

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