環境規制を強化する主要国が排ガスを出さないゼロエミッション車の導入を促す中、ホンダは電気自動車(EV)の開発を強化し、2018年に発売予定の中国を皮切りに、欧州や北米など他の地域でも専用モデルを投入する計画だ。開発競争が激化する自動運転分野では、25年ごろをめどに運転者が関与しない完全自動運転の技術確立を目指す。

八郷隆弘社長
八郷隆弘社長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  「近年これらの領域では進化のスピードは急激に速まっている」-。八郷隆弘社長は5日、栃木県内の研究施設で記者団に対し、環境対応と自動化技術開発の必要性を強調した。EVに関しては、昨年10月にEV開発室を新設して体制を強化したと話した。これまで担当部署が分かれていたのに対し、パワートレイン(駆動装置)から車体まで一貫させることでEV開発を加速させるという。

  本田技術研究所の松本宜之社長は、EVはガソリンなど内燃機関の車両より部品数が少なく、従来車と比べ開発は「もっと早くできるだろう」と話す。今後まずEVを投入していくのは、小型車「フィット」などが属する「Bセグメント」を想定しており、このクラスがホンダの主戦場と位置付ける。地域別の専用モデル投入先としては、中国に続き欧州や北米を挙げた。

  ホンダのEV開発について、SBI証券の遠藤功治アナリストは「印象としてはずいぶん遅れている」と話した。環境規制の強化を受けて欧米や中国でEV普及が進む中、ドイツや中国勢は日本メーカーと比べ技術が「相当進んでいる」とみている。

  ホンダは30年ごろまでに世界販売台数の3分の2をハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、EVなどの電動車両にする目標を掲げている。2月には日立オートモーティブシステムズと電動車両用モーター事業の合弁会社設立で基本合意するなど、他社との連携も進めている。

自動運転

  25年ごろの技術確立を目指す「レベル4」の自動運転は、運転者が全く関与せずシステムが運転している状態だ。ホンダは現在、20年を目標に高速道路で車線変更して複数車線でも自動走行ができるよう検証を進めている。

  自動運転技術をめぐっては、日産自動車が18年に高速道路、20年には交差点を含む一般道路での導入を計画している。トヨタ自動車はホンダと同様に20年に高速道路で実用化を目指している。ホンダが完全自動運転の実現目標を表明したことについて、八郷氏は「決して日産さんとかを気にしているわけではない」とした上で、技術的には「一歩一歩進化させてやっている」と話した。

  自動運転のレベル4に対してはこれまでホンダやトヨタが「非常に消極的」だったとSBI証券の遠藤アナリストは指摘する。米テスラや独フォルクスワーゲンなど欧米メーカーが20年前後にレベル4の実用化を掲げているのに対して、若干遅れている印象が拭えないという。

  ホンダはグーグルを傘下に持つ米アルファベットの自動運転研究開発子会社ウェイモと提携に向けて協議している。自動運転では人工知能(AI)にあらゆる走行場面を学習させて対応できるようにすることが鍵となるため、米国で豊富な走行実績を持つグーグルのデータが開発に有効とみている。八郷氏は自動運転で目指す姿として、「楽しく移動できる」時間や空間を追求することで他社の車両との「違いをつくっていく」という。人が操ることがなくても「単に応接間が移動するだけではつまらない」というのが基本的な考え方だ。

2030年ビジョン

  ホンダは10年にその後10年の経営方針として「2020年ビジョン」を発表していたが、今回、20年を待たず「2030年ビジョン」を策定し、四輪事業を中心に既存ビジネスの基盤強化など今後の方向性を示した。特に地域事業については、顧客ニーズの近い地域間で連携して専用モデルを開発するなどで効率を高めていくとしている。

  6月で就任から丸2年となる八郷氏は、今後の課題として「四輪事業は将来に向けてもっと競争力を確保していかないといけない」と話した。研究所内では昨年10月、車の加速やブレーキ感覚など数値で表せない感性を重視する商品・感性価値企画室や、コスト低減を担う四輪原価企画部を新設するなど組織を改編している。

  研究所を担う松本氏は、新しい体制で特徴ある車を提供していくことで、「電動化の時代でも車メーカーとしての生き方を考えていく」と強調した。

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