日産自動車が自動運転や電気駆動の独自技術を武器に国内販売を伸ばし、軽自動車やトヨタ自動車を中心とするハイブリッド車(HV)の牙城だった国内市場に一石を投じている。

  東京都台東区で会社を経営する後藤祐介さん(45)は昨年、日産自の新型ミニバン「セレナ」を購入した。お目当ては日産自が初めて導入した自動運転技術「プロパイロット」だ。1960年式フィアット600Dなど数台を保有するビンテージカーマニアである後藤さんはその一方で最新テクノロジーへの関心も深く、現状で最も高度な自動運転技術を体験してみたかったという。

プロパイロット搭載のセレナ
プロパイロット搭載のセレナ
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  プロパイロットは画像処理ソフトウェアを搭載した単眼カメラで前方車両や白線を認識し車両を制御して高速道路の同一車線内での自動運転を可能にするもので、8日には主力SUVの「エクストレイル」にも対応すると発表。今年度中に投入予定の電気自動車の新型「リーフ」にも搭載することも明らかにしている。

  独メルセデス・ベンツや米テスラも同種の技術を実用化しているが、日産自によると、300万円を切る価格帯の量販車への搭載は例がない。後藤さんは4月の取材時に約6000キロメートル走行したが不具合もなく快適に使用できているといい、「本当に運転が楽になった」と話す。さらに「この価格帯であのレベルでできるのはびっくり。ユーザーの乗れる値段を考えてくれてるからすごく欲しい、買えるという状況になる」と述べた。

30年ぶりの首位奪還

  日産自では昨年市場投入した新型電動パワートレーン「eーPOWER」を搭載した小型車「ノート」の販売も好調だ。ガソリンエンジンで発電した電気でモーターを動かす駆動方式で、約177万円からの価格帯で2.0リッターターボ車並みの加速が得られる一方、最高燃費は1リットル37.2キロメートルに達する。昨年11月の国内新車販売ランキングでトヨタのプリウスを抜いて日産自のモデルとして約30年ぶりにトップに立ち、年明け以降も1月と3月に登録車首位となり勢いを維持している。

e-Power搭載のノート
e-Power搭載のノート
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  調査会社、カノラマジャパンの宮尾健アナリストは、日産自が2つの技術で国内消費者の嗜好の変化をとらえ、波に乗っているのは事実と指摘。プロパイロットもeーPOWERも魅力的な技術を低価格で提供できている点が消費者にとってメリットになっているとし、「それらを横展開することでグローバル競争力が上がる」ことが期待できると述べた。

  日本自動車販売協会連合会のデータによると、日産自の昨年度の軽自動車を除いた国内登録車販売台数は、前年度比12%増の39万8328台でホンダを抜いてトヨタに次ぐ2位に浮上した。国内市場では軽自動車が全体の4割弱を占めるほか、トヨタやホンダなどのHVが上位を占める状態が続く中、日産自の国内販売は低迷が続いていた。

  日産自のダニエレ・スキラッチ副社長は5月24日の横浜市の本社での会見で、プロパイロットとeーPOWERが国内の勢いを生み出しているとの見方を示した。同氏は電子メールでの取材に、プロパイロットに関しては海外でも主力モデルに順次展開していくとし、ルノーや三菱自動車を含めたグループで20年までに10モデルに搭載する計画だと明らかにした。

  自動運転技術に詳しいデロイトトーマツコンサルティングのコンサルタント、周磊氏はプロパイロットについて「上々の滑り出し」とした上で、完全自動運転に向けて「現在のリードを維持し、ユーザーに使いたいと思えるような次世代技術を提供し続けられるか」がポイントになると話した。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE