欧州で相次ぐテロに加えて、中東やアジアでの地政学的対立、先行きの見通せない米国の政治状況など、金融市場は今や不安要因に事欠かない。

  そのような強い逆風にもかかわらず、市場のボラティリティーがあらゆる資産クラスで歴史的低水準にある状況を合理的に説明するため、投資家はパッシブ運用の資産急増からソーシャルメディアの台頭に至るまであらゆる事象を引用し、無数の理論をこれまで考え出してきた。

  これに対し、ニコラオス・パニギリツオグル氏を中心とするJPモルガン・チェースのストラテジストらは基本に立ち返ってこの静寂さを説明する。指標の落ち着きは、経済と市場のファンダメンタルズを正確に反映しているというのが、彼らの主張だ。

  JPモルガンのストラテジストらは最近の顧客向けリポートで、「経済のサプライズが今は非常に少なく、市場のボラティリティーが低い水準にある理由を説明するにはそれだけで十分だ」と指摘した。

  彼らによれば、ボラティリティーは、インフレと成長の見通しを変える中央銀行の政策決定や経済データの公表といった変化に伴い、市場参加者がポジションを動かす場合に上昇するが、そのようなサプライズへの感度は主に2つの要因によって決まる。ポジションのレバレッジ活用度がその一つであり、市場参加者の手元の現金が潤沢であれば、押し目で買いを入れ、上げ下げ両方向の値動きを抑制する力を持つことになる。もう一つの要因は投資家の取引傾向だ。

  これら3つの角度から見て、今の穏やかな市場環境は、経済と市場のファンダメンタルズによって正当化されるとJPモルガンのストラテジストは主張し、あらゆる資産クラスを通じて歴史的低水準にあるボラティリティーが投資家の自己満足を反映しているのではないかという不安を打ち消した。

  ただJPモルガンのチームによると、警告と受け止められる事象も一つ存在する。市場静寂の中で、米国の個人投資家のレバレッジの積み上がりは「極端な」レベルに達しており、S&P500種株価指数の時価総額のうち信用取引の与信額が占める割合は、中国が予想外の人民元切り下げに動いた直前の2015年半ばの記録的な水準に近づきつつある。

原題:JPMorgan Has a Surprisingly Simple Theory for Low Volatility(抜粋)

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