液体の化学製品を運ぶケミカルタンカー事業を中核に据える飯野海運は、米国からのシェールガスを原料にした製品の輸出が世界中に広がることを見据え、これまで中東が中心だった配船を米国にも拡大しタンカー事業の成長を目指す。現在、中東地域での石油化学製品輸送でシェア首位という強みを生かし、米国からの輸送でも首位を狙う。

当舎裕己社長
当舎裕己社長
Source: iino mediapro

  飯野海運の当舎裕己社長はインタビューで、同社は中東からアジア・欧州への輸送に現在20隻以上のタンカーを配船しており、「中東での石油化学製品分野の船積み量シェアは世界トップの地位にある」と述べた。「中東1本足打法では地政学リスクもあり、出荷が本格化する米国にも配船し分散させる」方針だ。

  北米で技術革新によりこれまで採掘が難しいとされていたシェールガスやシェールオイルの採掘が可能となり「シェール革命」と呼ばれ、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えてきた。シェールガス・オイルや、それらを原料にした石油・石化製品などの輸出が今後本格化する見通し。今年に入り初めて日本にもシェールガス由来の液化天然ガス(LNG)が米国から輸入され、供給源の多様化や調達コストの低減といった効果が期待されている。

不安定感の懸念

  当舎氏によると、今後米国から新たに石化製品を輸出するのは、すでに同社と中東からの輸送で契約している石油メジャーなどの企業。「彼らはわれわれのパフォーマンスや品質管理を熟知しており、違和感なく米国出荷分の石油化学製品を任せてくれる」との考えを示した。

  シティグループ証券の姫野良太シニアアナリストは、あくまでも一般論とした上で、足元ではサウジアラビアなどがカタールと国交断絶を表明したことからペルシャ湾岸地域が不安定化するのではとの懸念も高まっており、地政学的なリスクの回避で他地域にも供給先を確保する戦略は正しい判断と指摘した。

飯野海運が保有するケミカル・タンカー
飯野海運が保有するケミカル・タンカー
Source: IINO KAIUN KAISHA, LTD.

  当舎氏は「追加的に米国から出てくるものをカバーするために、これまで3年間、新造船発注や船主からの用船などで船隊の拡充を進めてきた」という。同社が4月に発表した中期経営計画でも、ケミカルタンカーの船隊を2016年度末の38隻から19年度末に45隻に拡大する方針を示した。

  他分野の船隊を現状維持か縮小させる一方で、最も得意とするケミカルタンカー分野には注力投資し米国への定期配船で石化製品の輸送需要を取り込む。今後も継続的に投資を進める考えで、同氏は「24年度には50隻をめどに拡大するが、今後の需給次第で変動する可能性はある」と話した。

  米国での需要を開拓するため、すでに開設済みのテキサス州ヒューストンの事務所の人員も増やす方針。ヒューストンは、米国を代表する油・ガス田があるため、古くから多くのエネルギー関連企業が拠点を構えている。

  トランプ米政権への評価とエネルギー関連事業への影響について、当舎氏は「報道を通じて新政権についてはいろいろな評価は出ているが、米国経済は着実に立ち直りつつあり景気状況は好転しつつあると見ている」と述べた。

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