三菱マテリアルは、廃棄されたパソコンや携帯電話などから金や銀などを取り出して再利用する事業を拡大する。製錬所での電子部品のスクラップを処理する能力を2020年度までに現在と比べて最大で4割超増強することで検討に入った。環境意識の高まりを背景に電子機器などのリサイクル率は世界的に向上しており、原料となるスクラップの発生量が増えていることに対応する。

  金属事業カンパニープレジデントの鈴木康信専務執行役員らが、ブルームバーグに対して述べた。

三菱マテリアル直島製錬所の有価金属リサイクル施設
三菱マテリアル直島製錬所の有価金属リサイクル施設
Source: Mitsubisi Materials

  三菱マテリアルのスクラップ処理能力は、直島製錬所(香川県)で年11万トン、小名浜製錬所(福島県)で同3万トンの計14万トンと世界最大。検品やサンプル採取の機能を持ち、欧州での電子部品スクラップの集荷拠点となる新会社をオランダに設立しており、11月に操業予定。これに伴い、両製錬所でそれぞれ1万トン増強し、18年度には処理能力を16万トンに高める。さらに、20年度には最大20万トンまでの拡大を視野に検討を進めている。オランダ新会社の稼働状況を踏まえて最終決定する。

  集荷するのは主に電子機器などに使用される基板。金や銀、銅などが使われており、都市鉱山とも呼ばれる。5センチ以内に破砕した廃基板を国内で調達するほか北米やアジア、欧州から輸入。銅地金を製錬する直島小名浜の両製錬所で2センチ以内に破砕して、銅鉱石とともに炉に投入し、金や銀の地金へと再資源化する。

コスト面で優位に

  金属事業カンパニーバイスプレジデント兼製錬部長の佐藤秀哉フェローは「独自の技術によりリサイクル処理に適した炉を持っており、廃基板を直接投入することが可能」と説明。一般的な炉の場合、基板の土台となる絶縁体を溶かす前処理が必要になるが、その工程がほとんど不要のためコスト面で優位となる。

  三菱マテリアルによると、廃基板などの電子部品スクラップは16年に世界で70万トン発生した。同社の処理能力14万トンは世界シェアの2割を占める。

  銅鉱石には金も含まれており、銅とともに金の地金も製錬するのが一般的だ。ただ、1トン当たりの銅鉱石に含まれる金の量はわずか数グラム。金の含有率が世界最大級の菱刈鉱山(鹿児島県)で産出される金鉱石でも30-40グラムにとどまる。

リサイクルされる廃基版
リサイクルされる廃基版
Source: Mitsubishi Materials

  これに対して、三菱マテリアル企画管理部の岩堀滋彦部長は「廃基板には平均で1トン当たり50-70グラムの金が含まれる」と話す。同社は150グラム以上の金を含む廃基板を高品位と位置付けており、750グラムもの金が含まれている場合もある。金の含有量によって廃基板の買い取り価格が決まる。

  金地金の生産は銅鉱石に含まれる金の品位が高いか低いかによって大きく左右される。三菱マテリアルではスクラップ原料の再利用を拡大してきたこともあり、金地金の生産量は年々増加しており、国内非鉄製錬メーカーの中ではトップ。金地金の生産のうち2-3割がスクラップ原料によって生産される計算になるという。

  銅の製錬事業においては原料となる銅鉱石の調達価格を巡り、資源メジャーを中心に鉱山側が寡占化していることもあり、購入する製錬側には不利な状況が続いている。そのため、銅製錬事業の採算は全体的に低下しているが、スクラップ原料を使用して価値の高い金地金の生産を増やすことで採算向上にもつながる。野村証券の松本裕司シニアアナリストは「収益には一定のインパクトを与えている」と指摘する。

  法整備の見直しも追い風となりそうだ。欧州連合(EU)では全ての国からの有害性の低い廃基板の輸入について、通告や同意などが不要。一方、日本ではアジア地域など途上国からの廃基板を輸入する際には特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)に基づき政府の承認が必要となる。手続きに時間がかかり、1件当たり180日程度の日数を要している。国際競争上で不利との指摘が出ており、製錬会社で構成する日本鉱業協会が法改正を求めていた。

  廃基板の輸入において政府承認を不要などとするバーゼル法改正案は現在、国会で審議中。6月中にも成立し、来年にも施行される見通しだ。経済産業省と環境省は法改正によって途上国からの廃基板の輸入量が年間13万トン以上増加し、金や銀などに再利用して販売することで1000億円弱の経済効果が見込めると試算している。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE