東日本大震災以降に電力不足を補う重要な役割を果たしてきた石油火力発電は、原子力発電所の再稼働や電力会社間の競争激化を背景に、電力需給の変動を調整する役割さえ他の電源に奪われつつある。燃料供給に携わる石油業界は、供給態勢の維持に危機感を募らせている。

  高浜原発3、4号機(出力計174万キロワット)の再稼働を進める関西電力は、相対的に発電単価が高く老朽化した石油火力発電の海南火力発電所1-3号機(同計150万kW)を9日までに休止する。さらに原発再稼働が進めば石油火力発電用の燃料調達量は一段と減ることから、需給調整を液化天然ガス(LNG)火力発電で代替することを検討している。

  需要のピーク時に電力を補充するために存続してきた石油火力発電は、東日本大震災後にその役割を果たし、全原発停止による電力不足を補った。電力大手10社の全電源に占める石油火力発電の割合は一時2割近くまで上昇し、重原油の消費量も十数年ぶりの高水準を記録。ただ再生可能エネルギーの台頭に加え、原発再稼働により、2016年度の重原油の消費量は1989年度の統計開始以来、最低水準に低下した。

  震災の経験を踏まえて2014年に政府が策定したエネルギー基本計画は、「調整電源としての石油火力の活用を進めることが不可欠」と定め、30年度の総発電電力量に占める石油火力発電の割合を3%程度確保する方針を示した。ただ1キロワット時当たりの発電単価が、原発や他の火力発電に比べて割高な石油火力発電は廃止や休止が相次ぎ、電力調査統計によると、石油火力発電の構成比は5%を下回る月もある。

コスト面で著しく不利

  燃料供給に携わる石油連盟の木村康会長(JXTGホールディングス会長)は5月30日の記者会見で、石油火力を緊急時に重要な電源として位置付けるのであれば、各発電設備に合う品質の重原油を供給しなければならず、「燃料のサプライチェーンを維持していかないと、いざというときに発電所を動かせない」と説明。政府が石油火力の位置付けをより明確にした上で、それに合わせた対策が必要との考えを示した。

  日本エネルギー経済研究所(IEEJ)は2月のリポートで、「石油火力は燃料費が高く、コスト面では著しく不利」とし、「電力全面自由化で競争が激しくなる中、低稼働の老朽設備の機能を維持していくのは容易なことではない」と指摘する。石油火力発電所は1979年に新設、建て替えともに原則禁止され、老朽化も進んでいる。

経営判断次第

  昨年8月に伊方原発3号機(出力89万kW)を再稼働した四国電力は代わりに阿南火力発電所2号機(同22万kW)を長期停止。川内原発に続いて玄海原発の再稼働を目指す九州電力は計225万kWの石油火力発電の廃止や停止を計画する。2016年4月の電力小売り全面自由化後の主戦場となる首都圏では、東京電力フュエル&パワーが4基の石油火力発電を長期停止した。関西電は重原油から木質バイオマスに燃料を変更する取り組みも始めた。

  電力10社の中で最も脱石油火力発電の進む中部電力は15年度の石油火力の電源構成比が1%に低下した。電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は5月19日の記者会見で、かつて石油の担ってきた需給調整機能は、LNGでも可能となりつつあると述べ、「石油火力を維持するか、他の燃料に切り替えていくかは、それぞれの事業者の判断」との見解を示した。

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