メイ英首相、リードから守りに-マニフェストのミスで世論調査に変化

  • 選挙運動開始時は約20ポイントの支持率格差、5ポイントまで縮小
  • 「強く安定」のイメージが「弱くて不安定」に、挽回できるか注目

メイ英首相が総選挙に向けた活動を開始した際、自身が率いる保守党が約20ポイントもリードしている世論調査について、間違っている可能性があると指摘していた。そのリードが縮小した現在は、調査結果の間違いを期待しているだろう。 

  選挙運動上のミス、そして労働党が大衆受けするキャンペーンを打ち出したことで、メイ首相は守りの姿勢に入った。首相が選挙運動で労働党のコービン党首が勝利する可能性に触れても冗談とは受け止められなくなってきた。メイ氏個人のブランドが強いとみて「メイ首相とそのチーム」への投票を促す選挙戦略を疑問視する向きも出てきた。

  メイ氏が約束する「強く安定した」政権作りが危機にひんしている可能性があるという事実に投資家は気が付いた。保守党の労働党に対するリードがたった5ポイントに縮まった世論調査が発表されると、ポンドは値を下げた。

  世論調査会社コムレスの会長、アンドルー・ホーキンス氏は電話インタビューで、「労働党が勢いに乗っているようにみえるなら、保守党の懸念は当然だが、まだ挽回できる」と述べた。 

  22日にマンチェスターで起きたテロ事件のショックが残る英国で6月8日に総選挙が迫る中、選挙活動を再開したメイ首相はこれまでの台本通り、コービン労働党党首では向こう2年の欧州連合(EU)離脱交渉を英国に有利に導けないと訴えた。

  メイ首相は29日、ロンドン南西部トウィッケナムでの集会で「投票が来週に迫るに当たり、有権者が自分の前にある選択肢を吟味することは重要だ」とした上で、「保守党は6議席失っただけで、過半数を失う。これはあと10日で、ジェレミー・コービン氏が首相官邸に入るという政局混乱を意味するかもしれない」と話した。

  その姿には、4月18日に総選挙実施を呼び掛けた際の自信は見られない。同日のICMおよびガーディアン紙の世論調査では保守党の労働党に対するリードは21ポイントあり、その数日後の週末の各紙調査でも24ー25ポイントの差が示されていた。それがテロ事件後のタイムズ紙の調査では保守党の支持率が43%、労働党38%と、昨年7月のメイ首相就任後で差が最も縮まった。

  このリード縮小の元凶はメイ首相チームのマニフェスト(選挙公約)だ。発表前日の夜に各紙に説明された社会保障政策は高齢者は自己資産が10万ポンド(約1400万円)に減るまでケア費用を自己負担するという内容で、野党などから「認知症税」と酷評された。このため発表から4日後、メイ首相はトーンダウンし、ケア費用の自己負担に上限を設けた。首相は今月22日に記者団らに内容は「何ら変わっていない」と強調したが、メイ氏のブランドは「強くて安定」から「弱くて不安定」に変わった。

  29日のスカイニュースとのインタビューでも、インタビュアーのジェレミー・パックスマン氏がこの点を指摘し、「もし私がEU当局者なら、あなたを何かあれば姿勢をすぐ転換するほら吹きだと思うだろう」と述べた。

  同じインタビュアーに対し、コービン氏はもっとリラックスした様子だった。君主制を廃止したいかとの質問に対しては、「女王と非常に雰囲気良くおしゃべりしましたよ」と答え、聴衆が拍手喝采。11日に労働党の正式承認前にリークされた同党マニフェストは、鉄道会社の再国有化、学校の授業料廃止、警官の採用拡大など大衆受けする内容で、これで一層の注目を集めた。

  もちろん、労働党が支持率を上げたことで、有権者の関心が首相の選択に集中し、メイ氏に追い風となるかもしれない。ホーキンス氏は「結論を言えば、有権者はEU離脱交渉や治安に関して指揮を執るリーダーを選ぶわけで、向こう数日のメイ首相の選挙運動でその点が強調されるだろう。そこを力説するしかない」と指摘した。

原題:May Battles Against Complacency as U.K. Election Lead Slips Away(抜粋)

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