エクイティ部長は元GSクオンツの39歳、SMBC日興を変革中

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  • 「失敗してもいいから挑戦してほしい」が口癖の山田誠氏は39歳
  • 三井住友銀との連携重視、前期トレーディング益は5年前の55倍に

「失敗してもいいから挑戦してほしい。リスクを取ってほしい」-。SMBC日興証券で株式トレーディング業務を担う山田誠エクイティ部長(39)の口癖だ。約2年前に米系のゴールドマン・サックス証券から移籍。約50人の部下へのメッセージは変化を恐れずに挑戦を続ける自身の姿とも重なる。

  山田氏は2015年7月にSMBC日興へ移り、昨年3月にエクイティ部長に起用された。14年間在籍してマネージング・ディレクターまで務めたゴールドマンからの転職は、「外資系証券の日本でのビジネスが縮小傾向にある中、日本で存在感を上げていくのは魅力的だと思った」からだ。海外ヘッジファンドからの誘いもあったが、「大きな新しいチャレンジをしたい」と決断した。

SMBC日興証券の山田エクイティ部長

Photographer: Ko Sasaki/Bloomberg

  SMBC日興の17年3月期決算で、株式などのトレーディング損益は前の期に比べ65%増の170億円。5年前の55倍に拡大した。先行するみずほ証券(343億円)や大和証券(217億円)などとの差は着実に縮まっている。野村ホールディングスは株式のみの損益を開示しておらず、債券・為替なども含めて4756億円。

  山田氏の現在の目標は、SMBC日興の株式トレーディングの収益性を日本市場で最も高くすることだ。「他社に追いつこう、追い抜こうと思えば、プロジェクトをしないといけない。来期、3年後に向けて多くのプロジェクトを行い、種をまいている」と言う。一方で、「システムを作るスピードも、タイムリーにハンドリングしていくための基盤も強化しなくてはならない」と課題も認める。

  山田氏は山口県宇部市出身。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長と同じ宇部高校を卒業後、米カルフォルニア大学バークレー校でコンピューターサイエンスを学んだ。ITバブル期の就職活動では名立たる米大手ソフトウエア企業からも内定を得た中で、高度な数学的手法を駆使するクオンツとしてゴールドマンに入社した。

  同社ではオプションや高頻度取引(HFT)のシステム開発などに携わったが、それを活用するトレーダーが常にそばにいたことで次第にトレーディングに興味を抱く。入社5年後にオプションやデリバティブ、先物などの自己勘定取引を行うプロップトレーダーとなり、その後日本の指数デリバティブの責任者を務めた。「トレーダーは顧客のためにチームで一緒にビジネスを作っていく、そのプロセスが楽しい」と転身の理由を説明する。

  フォア・ザ・チームの精神は11年3月の東日本大震災発生時に取った行動にも表れている。東京・六本木ヒルズの48階のオフィスが激しい揺れに見舞われる中、ヘルメットをかぶり、タイプミスを避けるために膝立ちでトレーディングを続けた。職責を全うしたいとの思いからだった。

リスクを恐れない

  当時の上司だった宇根尚秀ゆうちょ銀行執行役員は、「私の管轄で上げた収益の半分以上は彼が貢献してくれた」と明かす。「リスクを取ることを恐れないこと。何かしらの危機があっても正確な判断を続けていけること」が山田氏の長所とみる。

  13年に東証1部の値動きを示すTOPIXが51%上昇したアベノミクス相場はその後勢いを失い、16年は5年ぶりにマイナスとなった。東証1部の売買代金の一日平均は13年に2兆3523億円と前年から倍増した後、15年に2兆5000億円台に乗せて以降は減少傾向にある。

  株式市場に停滞感が漂う中、一部外資系証券では事業縮小の動きが出ている。英銀バークレイズは昨年1月に日本での現物株ビジネスを閉鎖。東京勤務のアナリストやトレーダーに退職を勧告した。クレディ・スイス証券は今年3月、エクイティ・リサーチなど株式業務を対象に日本と香港での人員削減に着手した。

  リクルートキャリアで金融業界を担当する福元崇之マネジャーは、外資系金融は「リーマンショックを大きな契機に業績が厳しくなり、東京から香港やシンガポールに一部を移管する企業が出始めた」と指摘。アベノミクス後もリーマン前に対して採用は増えず、全体の人員は「20%くらい減っている印象」と話す。

  一方、SMBC日興はエクイティ本部と海外拠点の株式担当者が17年4月までの3年間で1割増えた。14年4月にUBS証券から転じて常務執行役員エクイティ本部長に就任したトレボー・ヒル氏は、「数多くの人材を外資系企業から採用した」と語る。

三井住友銀と連携重視

  山田氏が重視するのは、同じグループの三井住友銀行との連携だ。SMBC日興の運用業務分野で同行から紹介を受けた法人顧客数は、17年3月末までの累積で約2万8000件。「銀行側の債券チームとよく市場の見通しなどについて話している。密に情報交換し、良いシナジーを発揮できる」と手応えを感じている。

  また、クオンツ担当者の積極採用などを通じ、進化の目覚ましい人工知能(AI)導入にも意欲的だ。「トレーダーの質は変わってくるかもしれない。トレーディングだけでなく、プログラミングに強い人間がより求められる」と予測する。

  楽観的な一方で慎重さに欠ける面があると自己分析し、「失敗も数多く経験している。自分より優秀な人はたくさんいて、いつも助けてもらいながら勝負している」と山田氏。部下とジムに通うのが楽しみな日課で、デスクにはプロテインを常備する。私生活で車は運転しないが、投資目的でクラシックカーを保有。プライベート・エクイティを好み、「稼いだお金の多くを回している」というエンジェル投資家だ。

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