孫社長の「金の卵産むガチョウ」半年で10兆円調達-ビジョンファンド

ソフトバンクグループが最先端のテクノロジー企業などに投資する「ビジョンファンド」を発足させた。多額の融資をてこに企業買収を繰り返し、同社を大きく成長させてきた孫正義社長の目利き力が、約半年で10兆円もの巨額資金を集めることに成功した。

  孫社長がビジョンファンドの創設構想を発表したのは2016年10月中旬。それから約7カ月で中東2カ国の政府系ファンド(SWF)のほか、米アップル、クアルコム、台湾のフォックスコンなどから930億ドル(約10兆3700億円)を集めた。今後6カ月で1000億ドルまで上積みする計画だ。

ソフトバンクの孫正義社長が20日にビジョンファンドを発足

Photographer: Bandar Algaloud/Saudi Royal Council/Anadolu Agency via Getty Images

  ソフトバンクの孫正義社長は、発足に際して「情報革命の次の段階の基盤となり得るプラットホームを実現する事業を立ち上げ、または成長する手助けができると信じている」とコメントした。ビジョンファンドの資金量は、ヘッジファンドならシルバーレイク4つ分、セコイアキャピタル14個分に相当する。

  ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真最高経営責任者(CEO)は「過去の投資実績で明らかなように孫社長の目利き力は非常に優れている」と指摘。これほど短期間で資金が集まったのは、巨万の富を握る世界のビッグネームが「今後にも期待できる」との認識を持つことができたからだという。

金の卵産むガチョウ

  孫社長は10日の決算会見で「今後、ソフトバンクの100億円以上の新規投資は原則ビジョンファンド経由になる 」と述べ、企業買収戦略に同ファンドを活用していく考えを示した。また今後は「大きな投資のために借金を増やすということにはならない」と説明した。

  孫社長はソフトバンクを金の卵を産むガチョウに例えてこう説明する。卵の数(投資先の事業価値)は増えているーー。「今からネット業界のゴールドラッシュが始まる。やるなら今だ」「投資を通じて自分のやりたいことを実現するため、新たな枠組みを作った。われわれのノウハウとビジョンに投資してもらう」と述べた。

  ソフトバンクは2000年に中国の電子商取引最大手、アリババに2000万ドル(約20億円)を出資したが、今や4500倍、900億ドル(約10兆円)に膨らんでいる。17年3月期決算は国内通信事業の好調やアリババ株の一部売却益なども寄与し1兆4263億円の過去最高益を記録した。5月の純有利子負債は約8兆円に上る。

  ビジョンファンドの投資戦略は、次世代イノベーションの実現を目指す企業などへの大規模かつ長期的な投資が基本。上場・非上場などは問わない。あらゆる物とインターネットをつなぐ「IoT」や、人工知能(AI)など情報技術(IT)関連だけでなく、金融テクノロジー関連企業などにも投資する。

巨額資金の行方

  関係者によれば、ビジョンファンドには、サウジのSWFが最大450億ドルを出資する意向を表明しているほか、アブダビのSWFは最大150億ドルの出資を計画。シャープは10億ドルを投資することを決めている。ソフトバンクは最大280億ドルを出資する計画だ。

  ミョウジョウ・アセットの菊池氏は、ビジョンファンドの考え方について「1社の自己資金に限界がある中で他者の資金を取り込んで支配権まで取れる新しいビジネスモデル。非常に期待している」と評価する。

  一方で、シカゴ大学ブース経営大学院のスティーブン・カプラン教授はプライベートエクイティー(PE)投資からのリターンは過去数年急減しているとし、「1000億ドルと聞いてギョッとした」と驚く。「すでに資金が余っているところにさらに資金をつぎ込むなんて意味がない」と指摘している。

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