カジノ誘致で明暗、認定手順に地方都市困惑-事業者選定にも影響

  • 政府案は大都市に有利、「地方創生はどこへ」と和歌山県知事
  • 大都市誘致に政治的課題も-横浜は市長選、大阪はインフラ整備

「地方創生の観点はどこへいった」-。和歌山県の仁坂吉伸知事は11日、カジノ産業関係者が集う都内のイベントで政府への不満を漏らした。この前日、政府はカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の認定手順と要件を有識者会議に提出していた。

  政府案によると、地方公共団体がまず事業者を選定し、具体的な事業計画を作成した上で国に申請する。地域を先に選定する場合に比べ申請段階で実効性のある計画が把握でき、事業継続性や経済効果を見極めることができるとしている。

IR候補地の1つである大阪市夢洲

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  仁坂知事は、地域が先に選定されないのであれば事業者側が集客力と投資効果の見込める大都市を選ぶことになるという見方を示した上で、「政府は失敗したくないから慎重になっている」と批判。もっと自治体や事業者の「アントレプレナーシップ(企業家精神)」を信じてほしいと訴えた。イベントに参加した北海道釧路市の蝦名大也市長も政府案は地方都市に不利と批判した。

  政府が国際会議場や劇場・博物館など4機能の完備を認定要件としたことも、小規模リゾート型施設を目指していた地方都市を不利な立場にした。認定地域は2-3カ所と想定されており、事業者の関心は選考に有利な東京都、横浜市、大阪府・市などに集中する可能性が高くなる。

  国内では、自民党がカジノの導入検討を始めた2002年ごろから複数の自治体が誘致に向けた準備を進めてきた。和歌山県は03年に「地方自治体カジノ研究会」を発足。ヨットハーバーやテーマパーク、温泉、ホテルが集積した県北部の「和歌山マリーナシティ」(和歌山市)を候補地に決定し、隣接する15ヘクタールがただちに開発可能として「リゾート型カジノ」の誘致をしてきた。

誘致と売り込み

  カジノを含めた統合型リゾートの整備を促す法律(IR推進法)は、昨年12月に国会で成立し、施行された。法律は「観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資する」と明記。施行から1年以内にカジノ解禁に伴う法規制などを定めた実施法案を策定することになっており、10カ所以上の地方自治体や海外のカジノ事業者が今年末を見据えて誘致や売り込みをしてきた。

ジョージ・タナシェヴィッチ氏

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  米ラスベガス・サンズのシンガポール事業を統括するジョージ・タナシェヴィッチ氏は、政府案を「最善の手法」と評価した。サンズでは、約100億ドル(1.1兆円)の投資で国際会議場やイベント場を統合したMICE(マイス)型の複合施設の構築を目指しており、国際空港に近く大規模商業圏である東京、横浜、大阪の3都市に注目しているという。

  マカオなどでカジノを運営するメルコリゾート&エンターテインメントのローレンス・ホー最高経営責任者(CEO)は2月、自社が得意とする娯楽性の高いIR施設の運営は大阪府の計画との親和性が高いと言及した。また、米MGMリゾーツ・インターナショナルも大型IR施設の実現に向け東京、大阪、横浜など3都市を軸に可能性を探っている。

  一方、マカオのカジノ運営者であるギャラクシー・エンターテインメント・グループは、誘致を目指す和歌山県と定期的に意見交換を行っていた。広報部門のジェレミー・ウオーカー氏は、国際会議場など4機能を持つことを条件とした政府案公表を受けて「自治体とより緊密な協力をする」と電子メールでコメントした。同メールではまた、日本政府が正しい決断をすると信じていると述べている。

大規模複合施設の必要性

  16年に2400万人だった訪日外国人を30年までに6000万人に増やすことを計画している政府にとって、大規模な学会やイベントを開催できる国際会議場の整備は課題だった。国際会議開催統計(ICCA)を元に観光庁が作成した資料によると、シンガポール、豪州、韓国、中国の5カ国での国際会議件数は、91年には日本が半数以上を占めていたのに対し、16年は28%だった。

  観光庁推計では、一般観光客の1人当たりの支出は15年調査で約17万6000円だが、同じ年に開かれた国際会議出席者の場合、主催者による会議・宴会・通訳などの費用加算で1人当たり約26万円となり経済的恩恵も見込める。

  大阪商業大学の谷岡一郎学長は4月に都内の講演で、大規模会議場はシーズンオフに収益が落ち込むが、カジノと一体運営することでカバーできると述べ、「IRという新しい産業の成功にはカジノは不可欠」との見方を示した。

大都市にも課題

  大都市にも不確定要素はある。7月2日の東京都議選を控えた小池百合子知事はIR誘致を優先課題には掲げていない。同月30日の横浜市長選ではカジノの是非を争点化する動きがあり、民進党の江田憲司代表代行は反対派を支援する方針だ。

  大阪府・市が計画している夢洲はインフラ整備が課題となっており、米カジノ運営大手、MGMリゾーツ・インターナショナルのエド・バワース執行役員は、12日のインタビューで、官民が協力して取り組む必要があると語った。

  また、同氏は政府は認定の細かな施設要件を示す前に、IRで目指すのが訪日外国人増加なのか、地域振興なのか、文化発信なのか明確な目標を示すべきだとも指摘した。

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