米金融当局は今年終盤か来年早々にバランスシートの縮小という、前例のない取り組みに着手する意向だ。これは構想、実施のいずれの点でも誤りだと私は考える。

  金融当局者は、現在4兆ドル(約450兆円)超に上るバランスシートを向こう5年間で2兆ドル余り縮小するのが妥当だとの考えを示唆しており、満期を迎えた債券について再投資を行わない方法を中心に進める計画だ。

  仮に金融当局が現在より小規模のバランスシートを目指すのが正しいことだと想定しても、再投資をせずに償還に任せるやり方は適切ではない。連邦準備制度の保有資産の多くの部分を住宅ローン担保証券(MBS)が占めるが、その償還のペースは住宅ローンの借り手の返済時期に関する判断に大きく左右される。その結果、当局は金融政策の重要な手段を制御できなくなる可能性がある。多くの借り手が突如、返済しようと決めたら、連邦準備制度の保有が減って実質的な引き締めとなるからだ。経済情勢を踏まえた計画的な売却を通じて減らしていく方がより良い手法だろう。

  そうはいっても、そもそも金融当局がバランスシート縮小を望む理由が理解し難い。低失業率および2%のインフレ率という目標と合致する「中立」姿勢を選択する上で、当局には基本的に「小さめのバランスシートと比較的低めの金利」と「大きめのバランスシートと比較的高めの金利」の2つの選択肢が残る。どちらが良いか。

  最初のアプローチでは、深刻なリセッション(景気後退)に見舞われた場合、金融当局は多額の資産購入によってバランスシートを膨らませるよう迫られる。これは強烈な政治的反発を招きがちの政策メニューだ。これに対して2番目の手法は、大きなバランスシートを維持することで当局は今まさに準備が可能となる。結果的に生じるインフレ圧力は短期金利を引き上げることで相殺でき、将来のリセッション時に一段の利下げ余地を残すというおまけ付きだ。

  もちろん、大きなバランスシートを抱え続けることで、金融当局には負担が幾分増す。例えば、経済の成長につれて、リセッションのリスクに対処するのに小さ過ぎることがないよう資産保有を増やさなければならないことが挙げられる。だが縮小ではなく、これこそが当局者が策定・伝達し始めるべき政策だと考えられる。

(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:The Fed Is Making a $2 Trillion Mistake: Narayana Kocherlakota(抜粋)

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