ドル強気派に頭痛の種、トランプ政権の運営めぐり広がる市場不安

  • 米国の政治リスク、景気懸念は円の対ドル相場押し上げ要因
  • 米金利は利上げペース加速観測の後退で低下基調、これもドル安要因

世界経済の回復で先行する米国の景気政策と金融政策に対する期待に陰りが出ている。対円などでドルに強気だった投資家は戦略を見直す必要があるかもしれない。

  ドル・円相場は足元で1ドル=112円台半ばと、トランプ氏が米大統領選で勝利して以降の単純平均113円ちょうど付近を下回っている。ドルの主要通貨に対する強さを指数化したドルインデックスは一時97.864と2016年11月9日以来の安値を付けた。前日発表された米住宅着工件数や建設許可件数など経済指標が予想外に伸び悩み、景気見通しへの不透明感を背景に米金利が低下したことが重しとなっている。

トランプ大統領

Photographer: Michael Reynolds/Pool via Bloomberg

16日の米国債相場の動きについては、こちらをクリックしてください

  為替相場の環境変化について、クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は、「情報漏えい問題の詳細、司法妨害の話が具体的に出ている。その辺を意識した米国の政権運営の遅れから、税制改革、オバマケアの代替法案の上院での採決が遅れるのではないかという不安が市場にある」と指摘。「期待が剝がれ落ちてドル売りが強くなっている。政治リスクの観点からリスクオフで円買いが出ている」と述べた。

トランプ大統領の漏えい疑惑に関する記事はこちらをクリックしてください

オバマケア代替法案に関する記事はこちらをクリックしてください

  SMBC日興証券の野地慎為替・外債ストラテジストは17日付のリポートで、米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するシカゴIMM非商業部門主要6 通貨先物のデータやドルインデックスの動向から、あらためて「トランプ大統領」をテーマとしたドル上昇局面が完全に終了したことがうかがえると指摘している。

  一方、フェデラルファンド先物を基にブルームバーグが算出したところによれば、米国の利上げ予想確率は6月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で90%と依然高水準にある。

  ソニーフィナンシャルホールディングス金融市場調査部の石川久美子為替アナリストは、FOMCに関する注目は、6月以降にあと何回利上げ実施されるかや、よりタカ派的になるのかどうかだと指摘。「現状インフレ懸念がない中、FRBが利上げの見通しを引き上げる可能性は少ないと思う。6月の利上げを実行後は、あと1回と、見通しを据え置きにする可能性は高い。ドルを更に上がるのは難しいと思う」と述べた。

  ステート・ストリート銀行の若林徳広在日代表兼東京支店長は、「投資家は米国の前回の利上げ実施前にドル上昇に高い期待を持っていたが、それは起きなかった。多くはそのことを覚えており、ここからポジションを明確に傾けるのに苦労するだろう」と述べた。

  FPG証券の深谷幸司社長は、「ドルが115円を超えるには、米長期債利回りがもっと勢いよく上昇しなくてはならないだろう。それがないと、ドルは欧州の地政学リスクや政治問題が重しになるだろう」と述べた上で、米国の景気回復に疑問符が付けば、105円から110円のレンジまで円高が進む可能性があるとした。

  ただ、ドルの下落は限定的との見方も根強い。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、「米国が唯一の利上げを実行している国で資産縮小を具体的に検討できるという事実を鑑みると、ドル・円相場は長期的には上昇に向かうはずだ」と言う。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE