最新の銀行規則、FRTBに備えよう-自己資本の最低要件は上昇へ

2008年以降に次々と制定された金融市場規則の「真打ち」とも言うべき、「トレーディング勘定の抜本的改定(FRTB)」がやってくる。

  バーゼル銀行監督委員会の最新規則は、トレーディング勘定でのマーケットリスクに対して銀行が保持しなければならない自己資本の最低要件を規定する。現行規制の基底を成す原則は維持したままの一部見直しのため、「改定」と呼ばれる。一方で、算定の枠組みの全ての部分が変更されているため「抜本的」でもある。

この記事はブルームバーグ・マーケッツ誌4月・5月号に掲載

Cover artwork: Steve Caldwell

  影響は大きいと考えた方がよさそうだ。コンサルティング会社のオリバー・ワイマンは、世界の銀行がFRTB対応のために費やす額を総額で50億ドル(約5700億円)と見積もっている。

  導入のための費用がかかるばかりではなく、資本の最低要件が確実に高くなる。一部のトレーディングデスクは存続を脅かされかねない。部門責任者らが特定の業務の継続が経済的に理にかなうかどうかを査定するからだ。システムを整備し、間に合うよう十分にテストするために決定は今下さなければならない。FRTBは19年1月1日までに各国の規則に適用される。銀行は18年末までに準備を整えることが想定されている。19年末までに新規則に基づく報告をしなければならない。

  現行規則の「バーゼル2.5」は銀行勘定とトレーディング勘定で資産の扱いが異なる。このため、頭のいいバンカーたちは両勘定の間で資産を移動させることで規制裁定をすることが可能だ。

  必要資本額の算定には標準的方式(SA)と内部モデル方式(IMA)の二つがある。現行の慣行では、SAによる資本賦課はあまりにも厳しいので監督当局がIMAを認めないと銀行は営業できなくなるほどだ。

  FRTBはこれらの問題に対処しているが、代償としてかなり複雑なものになる。改定後のSAは注意深く規定されており、7つのリスクタイプについてデルタ、ガンマ、ベガのリスク指標を使用する。例えば、金利リスクに対するマチュリティーごとのバケットが明確に規定されている。使用しているリスク・システムの出力が別の商品のデルタ・ラダーに合わせていたとしたら不運だ。すなわち、決められたバケットに合わせて出力結果を変換しなければならなくなる。さらに、分類の問題もある。エクイティー・リスクについては、先進国が一つのグループとなっている。そうすると例えば、ポーランドが先進国ではないのか、メキシコはどうなのかといったことをシステムが把握する必要が生じてしまう。

  個々のリスクタイプ内での多少の相殺は可能だが、デルタリスク資本賦課が厳密にガンマリスク資本賦課に上乗せさせるので、SAを適用すると必要資本が2倍になると見積もられる。一方、必要資本の計算にIMAを適用する銀行も、SAを適用した場合の必要額を報告する必要があり、銀行間の比較が容易になる。

  今年初めから、ブルームバーグはその機能やエンタープライズ・サービスにFRTB用のアナリティクスを導入し始めた。例えば、ブルームバーグの「MARS(マルチ・アセット・リスク・システム)マーケット・リスク」のエンタープライズ・サービスでは、FRTB用のSAソリューションが含まれている。詳細はFRTBを参照。

  大手銀行はIMA適用を目指すだろう。IMAでの必要資本は、バリュー・アット・リスク(VaR)ではなく、期待ショートフォールを基準に計算される。期待ショートフォールは、信頼限界を超えるような全状況を補足することによって、悪い状況というのがどの程度悪いものなのかといった感覚を与えてくれる。期待ショートフォールは3つの異なるシナリオで、複数の流動性ホライズン(10-120日)とリスククラス別にグループ化されたリスクファクターについて算出しなければならず、結果的に現行ルールに比べて15倍以上の計算が必要になる。これは「ビッグデータ」の問題と計算に要する時間という点で困難な課題だ。夜間にフロントオフィスモデルが、全てのシナリオについてシミュレーションするのに十分な時間稼働しているかという問題だ。ブルームバーグのIMA用MARSプラットフォームには大量のFRTBシミュレーションを処理するのに必要なスケーラビリティと共に必要な全ての分析ツールがまとめられている。

ブルームバーグ・リスク・マネジメントのプラットフォーム

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  リスク部門による見積もりではなくフロントオフィスモデルを利用することがより一般的になるだろう。なぜならば、算定結果は損益アトリビューションテスト(リスクシステムが示唆した理論的損益が実際の損益に一致しなければならない)と過去のデータによるバックテストの両方に合格しなければならず、いずれかが不合格ならSA適用を迫られるからだ。IMAはトレーディングデスクごとのレベルで行われるため、全社の資本賦課を最適化するようなデスク構造にトレーディングをまとめることがシニアマネジャーの最優先の課題となるだろう。

  問題はあと二つあり、そのうち一つは、エキゾチックトレードのプライシングモデルの一部はコリレーションのような市場で直接観測できないインプットを利用することだ。これらはノンモデラブルリスクファクターと呼ばれ、過酷な追加賦課の対象になる。年間24回以上、1カ月以上の間隔を空けずに取引されていないものはノンモデラブルと定義される。つまり、各取引の長年限、ディープ・アウト・オブ・ザ・マネーのエクイティーオプションのスキューのような取引記録を集めることが重要になってくる。

  第二に、ストレス時に対する追加賦課がある。銀行は少なくとも07年までさかのぼって最もストレスが多かった12カ月を特定し、この期間についてモデルを走らせ追加賦課を計算しなければならない。

  これらの問題にはどのように対応したらよいのだろうか。まず、計算に当たってはブルームバーグのヒストリカルデータが利用できる。さらに、ブルームバーグはサービスに参加する銀行が自らの観測した取引を報告するFRTBデータサービスを用意。それらのデータを匿名化して集約することによって各メンバーが利用できる完全なデータセットとして提供する。これは誰にとってもメリットのあることだ。最初の試験的なサービスは成功裏に終了したが、来年に控えた商品のローンチ前に各銀行は今からでもこのサービスに参加することができる。
(ケビン・シンクレア)

  (シンクレア氏はブルームバーグのロンドン在勤の債券市場スペシャリストです)

原題:Get Ready, Here Comes the Fundamental Review of the Trading Book(抜粋)

 

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