日本にカジノはいつ誕生するのか、経済効果や関連銘柄は--。今後のスケジュールを含めてQ&A形式でまとめた。

ラスベガスで開催された2016年のグローバル・ゲーミング・エキスポでの光景
ラスベガスで開催された2016年のグローバル・ゲーミング・エキスポでの光景
Photographer: Jacob Kepler/Bloomberg

  カジノを含む統合型リゾート(IR)を解禁するIR推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)が昨年12月に施行され、政府でカジノ開設に向けた議論が始まった。1年以内にIR実施法案をまとめ国会に提出することが定められており、4月4日には安倍晋三首相自らが本部長を務めるIR推進本部の初会合が開催され、実施法案の策定に向けて動き始めている。

  政府はカジノの開設を東京五輪後の経済成長の起爆剤にしたい考え。しかし、ギャンブル依存症の患者を増やしたり、暴力団などのマネーロンダリング(資金洗浄)に利用されたりする可能性があるなど、一部の与党議員からも慎重論が出ている。

1.カジノはいつ日本にできるのか?

  政府がIR実施法案を策定後、民間企業へのカジノ営業ライセンスの付与や建物の建設にも時間が必要になるため、2020年の東京五輪以降になることは確実。香港のCLSA証券は23年ごろに国内初のカジノが開設されると予測している。また、大阪市が大阪府、関西経済3団体と共同でとりまとめた「夢洲まちづくり構想(案)」では、24年前後に人口島の夢洲(ゆめしま、大阪市此花区)でカジノが開設されることを想定している。

2.IR施設はどこにつくられるのか?

  誘致している自治体は北海道(釧路市、苫小牧市、留寿都村)、大阪府・市、長崎の佐世保市、和歌山県などがある。沖縄県は07年に検討委員会を立ち上げたが、14年にカジノ反対を掲げる翁長雄志知事の就任で検討を断念している。

  東京都では石原慎太郎氏が知事を務めた時代にお台場でのカジノ構想が持ち上がったが、小池百合子知事は観光振興が大きなポイントとなるとした一方で、懸念材料もあり引き続き検討が必要との考え。CLSA証券の予想によると、最初に東京と大阪、そして一つの地方都市として沖縄が立地に選ばれる可能性があるという。

3.日本市場の特徴、他のアジアの国とはどう違う?

  世界のカジノ運営大手が異口同音にたたえるのが、日本の観光資源の豊富さだ。世界遺産の数々や温泉、ミシュランガイドお墨付きのレストランなど、IR施設への集客にもつながる要素を多く兼ね備えている。さらに、カジノ以外の観光施設への波及効果も期待されている。例えば、大阪市の案では訪日外国人の増加による消費拡大効果や中国、四国地方など周辺地域の観光への波及効果などを見込んでいる。

  また、推進本部の下に設置された有識者会議に参加している大阪商業大学アミューズメント産業研究所の美原融所長によると、日本はアジアの他の国と比べ中間所得層が多いことから、ビジネスマンなど向けのハイエンドの娯楽としての集客も期待できるという。すでに1万店以上あるパチンコと数カ所にしか造らないIRとでは客層が異なり、すみ分けが可能との考えも示した。

4.今年のIR実施法案では何が決まる?

  IR施設を建設できるエリアの認定制度、規制やカジノを管理する組織の在り方、納付金や入場料などについてIR推進本部の有識者会議で検討を進めており、夏ごろをめどに議論の大枠をまとめる予定。カジノの運営会社はIR実施法案で立地や、ライセンスの数、税制などが定められることを期待している。同法案の内容が、各社のパートナー選びや投資額を左右する見通しだ。

5.IRが日本にもたらす経済効果は?

  カジノ運営各社の売り上げを示す「ゲーム粗収益(GGR)」について、50億ドル(約5400億円)から250億ドルになると予測されている。格付け会社のフィッチ・レーティングスは日本にIR施設が二つできた場合、70億ドルの市場規模になると予想。CLSA証券は二つの都市型IR施設に加え、10の地方型施設ができた場合には市場規模が250億ドルに達すると予想している。

6.誰がIR事業に参加するのか?

  カジノ世界最大手のラスベガス・サンズをはじめ、MGMリゾーツ・インターナショナルウィン・リゾーツメルコリゾート&エンターテイメントシーザーズ・エンターテインメントハードロック・インターナショナルなど世界大手のほとんどが日本でのIR開設に関心を示している。

  また、国内ではカジノ機器やパチンコ機器を生産するセガサミーホールディングス、傘下にテーマパークのハウステンボスを有する旅行代理店のエイチ・アイ・エスなどが興味を示している。コナミホールディングスは14年、IR推進法案成立に合わせてカジノ施設への投資会社を国内で設立する計画を発表したが、5月8日時点では設立していない。同社は96年にカジノ機器の製造・販売を開始しており、スロットマシンでは米国で約12%のシェアを握っている。

7.IR関連の注目銘柄は?

  CLSA証券のアナリスト、ジェイ・デフィバウ氏はカジノの恩恵を受ける株式の銘柄としてコナミHD、セガサミH、HISのほか、機器を納入する会社や施設の建設を請け負う企業など広範に及ぶとしている。紙幣鑑別機などを製造する日本金銭機械、羽田空港から首都圏各所に直行バスを運行している京浜急行電鉄、資金調達のノウハウがあるオリックス、不動産関連で三井不動産三菱地所、建設業で鹿島建設大成建設大林組などを挙げている。

8.IRへの投資額は?

  トランプ氏の支持者でもあるラスベガス・サンズ最高経営責任者(CEO)のシェルドン・アデルソン氏は日本のIR施設建設に100億ドルを投資する用意があると発言している。ライバルのMGMも同額を投資できる用意があるとしている。メルコのローレンス・ホーCEOは2月の来日時に、日本での投資について「この機会はプライスレスだ。上限を決めるようなことはしたくない」と述べている。

9.ギャンブル依存症対策は?

  国内ではすでにパチンコが盛んで、日本生産性本部が発行している「レジャー白書2016」によると15年のパチンコ・パチスロの市場規模は約23兆2000億円に達する。また公営ギャンブルとして競馬や競輪などが存在する。14年の厚生労働省の調査では、ギャンブル依存症の疑いがある人は推計で成人人口の4.8%、536万人にのぼる。シンガポールではギャンブル依存症の有病率が14年時点で0.5%。政府はギャンブル依存症の実態の再調査を進める方向で、カジノの導入に向けては依存症対策の議論も欠かせない状況だ。

10.時系列でたどるこれまでと今後

IRに関する政府、与党などの動きは以下の通り:

2016年
-12月15日、IR推進法が成立
-12月26日、IR推進法が公布、施行
-12月27日、厚生労働省がギャンブル等依存症対策推進本部の初会合を開催

2017年
-3月17日、IR推進本部の設置が閣議決定
-3月24日、IR整備推進本部設置-安倍首相が本部長に
-3月31日、厚生労働省がギャンブル依存症の実態を把握するための面接調査の結果を発表
-4月4日、IR推進本部第1回会合が開催
-4月18日、与党が「ギャンブル等依存症対策の法制化に関するワーキングチーム」の初会合開催

今後の予定
-今夏、政府はIR推進会議における検討の大枠をまとめ、ギャンブル依存症対策の具体策、実施方法、実行するための工程表を策定
-IR推進法の施行から1年以内にIR実施法案を策定し国会に提出

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その他関連リソース:
*特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(IR推進法)全文
*IR推進本部の第1回会合議事録

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