深刻化する人手不足を背景に、正規雇用の増加が続いている。総務省が28日発表した3月の労働力調査によると、前年同月比で26万人増えた。非正規は17万人の増となり、過去2年連続で正規雇用が非正規を上回るペースで増加した流れは今年に入っても続いている。

  雇用の非正規化は賃金や消費を抑え込んできた要因の1つだった。正規雇用の増加は理論上、日本経済にとってプラスの材料だが、小売り、介護など賃金の安い業界が多いことや人口減による国内需要の拡大が望みにくいため、現実的なインパクトは限定的との見方が出ている。

  第一生命経済研究所の主任エコノミスト、柵山順子氏は正規雇用の増加は単に平均賃金を押し上げるだけでなく、教育機会の充実、雇用の安定や厚生年金への加入といった面で人々の将来不安を和らげ消費活性化の一助となると見ている。ブルームバーグの電話取材で語った。

  労働力調査の詳細集計によると、非正規雇用の労働市場における割合、いわゆる非正規雇用者比率は2016年では37.5%と02年以降で最高となっているが、柵山氏は同比率は今後ピークアウトしていくと見ている。

  柵山氏はその理由として小売り、医療福祉、介護などで女性の正規雇用者数の増加が続いていることを挙げる。ただ、これらの業界はもともと賃金水準が低い上に、生産性が低いので賃上げは限定的になる可能性も指摘。今年予想される物価上昇も実質賃金にはマイナスに働くため、現在の傾向が賃金や消費にもたらす影響については慎重に見る必要があると見ている。

  厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、16年に正社員の月収は非正規に比べて53%高くなっている一方、賃上げ率は非正規の方が近年高くなっている。非正規では人手不足などの需給要因を反映しやすいが、正規では労働組合側が春闘でも雇用の安定を重視する傾向がある。

  明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、企業は人手不足を受けて仕方なく正規雇用を増やしており、「どんどん景気が良くなって賃金が上がるかというとそれは別問題」と慎重な見方を示す。正規雇用の増加のペースも今後は鈍っていくのではないかと言う。「企業は人手不足で景気が悪いという受け止め方をしている」とし、「日本の人口自体が減っているので。内需がどんどん伸びていくという期待を持つことはできない」と言う。

  有効求人倍率では正社員よりもパートタイム労働者のほうが高く、雇う側からすると非正規雇用への需要の方が高くなっている。

  柵山氏は、正規雇用の増加は良いことだが、正規・非正規という雇用形態の分断が日本の労働市場の流動性を阻害している状況は変わっていないと指摘する。雇用の流動性こそが減少する労働力を効果的に活用するために必要であり、いずれは「非正規比率なんて気にするのが意味がない」という世の中になるのが「正しい理想的な姿」だと言う。

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