黒田日銀総裁:物価2%超、安定的になるのは18年度ごろより先

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  • 金融政策は維持、物価小幅引き下げ-景気判断9年ぶりに「拡大」
  • 17年度の物価見通しは1.4%上昇、2%達成「18年度ごろ」は維持

日本銀行は27日の金融政策決定会合で、昨年9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。黒田東彦総裁は会合後の記者会見で、物価目標が安定的に2%程度を超えるのは日銀が目指す「18年度ごろ」よりも先になるとの見通しを示した。

  日銀は四半期ごとに公表する物価見通しで2017年度を小幅下方修正する一方で、2%物価目標の達成時期は「18年度ごろ」に据え置いた。足元の物価については「このところ一部の耐久消費財やサービス価格が幾分弱めの動きとなっている」と指摘。先行き目標の「2%に向けて上昇率を高めていく」としながらも、引き続き「下振れリスクの方が大きい」としている。

  黒田総裁は会見で、「足元の物価上昇率が弱いのは主として携帯電話機や通話料の値下げが相当効いている」とし、一時的な引き下げである可能性が高いとしながらも、「足元が下がるとその後のものにもある程度の影響は出てくる可能性はある」と懸念を示した。

  2月のコアCPIは前年比0.2%上昇と2カ月連続で上昇したが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは0.1%上昇と引き続き低迷している。28日公表される3月のコアCPIは0.2%上昇と前月と同じ伸びにとどまると予想されている。

  目標とする2%に向けた物価上昇の足取りが鈍いことを受け、金融引き締め観測が後退している。ブルームバーグの調査では、黒田総裁の任期中に長期金利の誘導目標を引き上げるとの見方が半減した。

  黒田総裁は、出口戦略について「2%の物価安定目標を実現するということが議論の始まりだろうと思う」とした上で、米国と同様に「出口に差し掛かった時に、適切なコミュニケーションを取ることになろう」と言明。「現時点では具体的なイメージを持って今から議論するのは時期尚早だ」と述べた。

  日銀は物価目標の2%を達成するのは「18年度ごろ」との見方を維持しているが、黒田総裁は「安定的に2%程度を超える時期はそれよりも先になる可能性が高い」との見方を示した。

  金融調節方針は、誘導目標である長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いたほか、長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。

  指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も据え置いた。前会合に続き木内登英、佐藤健裕両審議委員が長短金利操作等の金融調節方針に反対した。ブルームバーグがエコノミスト39人を対象に11-18日に実施した調査では、回答したほぼ全員が金融政策の現状維持を予想していた。

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  一方で、日銀は会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、足元の景気判断を「緩やかな回復基調」から「緩やかな拡大に転じつつある」に上方修正した。「拡大」の表現が入るのは08年3月以来、9年ぶり。輸出と鉱工業生産も「増加基調」として従来の「持ち直している」から上方修正した。

物価見通しの信認「極めて低い」

  展望リポートでは、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)を17年度は前回1月の1.5%上昇から1.4%上昇に下方修正し、18年度は1.7%上昇に据え置いた。今回新たに公表した19年度は消費増税の影響を除き1.9%上昇。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは発表後のリポートで、17年度の物価見通しについて「実に不十分な下方修正幅である」と指摘。SMBCフレンド証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストも発表後のリポートで、日銀の物価見通しは「願望と期待に働きかける色彩が濃い」として、次回7月以降「毎回の展望リポートで下方修正していくことになりそうだ」としている。

政策委員見通しの中央値(単位%、カッコ内は今年1月の見通し)

17年度18年度19年度
CPI(除く生鮮)1.4(1.5)1.7(1.7)1.9(-.-)
GDP(実質)1.6(1.5)1.3(1.1)0.7(0.7)

 
  岡三証券の愛宕伸康チーフエコノミストは24日付のリポートで、日銀の物価見通しについて「15年度から18年度まで、最初の段階では必ず物価安定目標である2%近辺の数字が打ち出され、その後徐々に下方修正されるということが繰り返されてきた」と指摘。その結果、日銀の物価見通しに対する信認は「極めて低い」と指摘する。

  東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは同日付のリポートで、「早期の目標達成への決意を示すこと自体が国民のインフレ予想を高めるという考えが政策委員会にあったようだが、中央銀行がどんなに『気合』を示しても、そこに合理性がないと国民の予想はついてこれない、という現実がこの4年で明らかになったように思われる」という。

「検証困難な理屈」で当面現状維持

  みずほ証券の上野氏はリポートで金融政策運営について、日銀は「長期戦・持久戦」の構えを堅持しており、追加緩和のハードルは高い一方で、長期金利の誘導目標の引き上げなど金融引き締め措置は「円高・株安を自ら招き寄せてしまうことから論外である」と指摘。その上で、「物価のモメンタムは維持されている」という「客観的検証が困難な理屈を掲げながらの現状維持」が18年にかけて続くとみている。
  
  ドル円相場は会合結果の発表前は1ドル=111円30銭近辺で取引されていたが、発表後もほぼ変わらず。決定会合の「主な意見」は5月10日、「議事要旨」は6月21日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

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