東芝が売却手続きを進めているメモリー事業の争奪戦が激しさを増す中、同社の合弁相手である米半導体ウエスタンデジタル(WD)の存在感がにわかに増してきた。

  WDは現在東芝と半導体事業を合弁で運営しているが、東芝は米原発事業の巨額損失で生じた債務超過を解消するため、今期中の完了を目指し「東芝メモリ」売却に動いている。WDはすでに売却は契約違反だとする書簡を東芝に送っているが、WDのマーク・ロング最高財務責任者(CFO)は、東芝はまずWDと協議すべきだと主張した。

  WDのロングCFOは20日夕、都内で行ったブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、東芝のメモリー事業の入札に関連し、東芝との独占的な交渉を主張した上で、官民ファンドの産業革新機構や日本政策投資銀行と協議していることなどを明らかにした。

  その上で、WDは売却手続きに関係する「ほぼ全ての人たちと話し合ってきた」と述べた。日本政府とも協議しているという。産革機構などのほか、米アップルとも共同出資の可能性について協議しているとみられる。

金額かそれ以外か

  WDは昨年、158億ドル(約1兆7000億円)で米サンディスクを買収し東芝とフラッシュメモリー事業でパートナーとなった。しかし、東芝がメモリー事業の売却を決めたことで、事態を憂慮している。関係者によると、これまでの入札では台湾の鴻海精密工業や韓国半導体大手SKハイニックス、米ブロードコムがWDより高い買収額を提示している。

  ロングCFOは「われわれの考えは違う。第一の前提は、合弁事業が競争力を維持できることだ」と指摘。「われわれには他社よりたくさんの解決策がある。それはある一つの数字より、もっと複雑だ」と語った。

  複数の関係者によると、法的拘束力を持たない現時点での応札額は、最大3兆円を支払う意向を示唆する鴻海を含め2兆円超。今回の売却では、規模の大きさから資金的な支えになるパートナー探しが必要となっているほか、技術流出などを懸念する政府の納得を得やすくするため、日本企業などの参加も鍵となる。

   ロングCFOはまた、市場シェアの大きい同業者が対象となり時間もかかる独占禁止法の審査を回避する方法として、議決権のない優先株での出資なども検討しているとした。また、東芝と合弁で運営する四日市の工場は「WDにとって宝だ」と語り、買収できれば雇用や工場への設備投資を中長期的に維持する方針を示した。

争奪戦も日本政府を意識  

  ブロードコムは米投資ファンドのシルバー・レイク・マネジメントと組んで応札している。三井住友銀行など大手邦銀3行から買収資金として計150億ドル(約1兆6000億円)を調達する準備を進めていることも分かった。シルバーレイクは転換社債などで30億ドル(3260億円)を供給する計画。政府系機関もこの陣営に参加する可能性がある。

  SKハイニックスは、日本の投資家を含むパートナーと共同で入札に参加している。同社は東芝メモリ株式の20%以上は保有しない意向を示しているという。関係者によると、日本政府からの承認を得やすくする狙いだ。

  このほか、米アップルソフトバンク・グループなどの東芝メモリ買収競争への参加も浮上している。アップルは鴻海と日本企業連合との共同出資の可能性を、ソフトバンクはアップルや鴻海との連携などを模索しているという。中国に工場を持つ鴻海への売却は日米両国の政府から反発を招く公算がある。

  関係者によれば、こうした中で政投銀は東芝メモリへの出資を検討。特別目的会社(SPC)を作って米投資ファンドから出資を募るなど複数の選択肢を模索している。ファンドと連合を組む場合は、過半の出資となる可能性もあるという。

  2次入札の締め切りは5月19日で、それまでに今後も新たな買収額や、買い手候補間での連携などが提案される公算もある。東芝は米原発事業の損失拡大により前期末で6200億円の債務超過が見込まれている。

  東芝の株価は午後1時55分現在、前日比6%安の206.7円。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE