オーストラリアでバドミントンのコーチを務めるナイジェル・イシャウッドさん(50)は将来のインフレを見越して金や銀に投資しているほか、鉱山会社など欧米や豪州の上場株式も保有する。5年前からは資産の約1割をフランス・ワインに投じてきた。そして、昨年7月に目を付けたのがスコッチウイスキー。資産分散を図る狙いで4万1000ポンド(約570万円)を投資した。「ウイスキーを飲むのは好きではないが、投資商品としては比較的安全な資産だ」と語る。

  イシャウッドさんは、インターネットを通じてスコットランドの蒸留所でたるに入った熟成中のウイスキー原酒に投資した。売買を仲介したのが2015年に設立された英ウイスキー・インベスト・ダイレクト(ロンドン)。

  同社が手掛ける投資単位はスコッチウイスキーの原酒1リットルから。1日24時間、365日いつでも売買注文をすることができる。現在までに開設された口座数は約4000。投資家1人当たりの平均投資額は約8000ポンドで、投資額の累計は1000万ポンド弱という。ウイスキー・インベスト・ダイレクトは1.75%の取引手数料を得る。

ペルノ・リカール社の蒸留所に置かれたシーバスリーガルのたる
ペルノ・リカール社の蒸留所に置かれたシーバスリーガルのたる
Photographer: Simon Dawson/Bloomberg

  3月下旬に来日した同社創業者で最高経営責任者(CEO)のルパート・パトリック氏はブルームバーグとのインタビューで「債券や株式などと比べて投資リターンはかなりいい」と指摘。過去35年に取引された価格を基に算出すると、8年間熟成させたスコッチウイスキーの平均的な投資リターンは保管料などを差し引いた実質で年率約7%になるという。欧州中央銀行(ECB)などがマイナス金利を導入するなど世界的な低金利の中、高い利回りが期待できる投資商品として魅力は高まると話す。

  上場株式や国債などいわゆる伝統的な投資商品以外の代替資産としては、ワインや絵画、宝石なども投資対象となっている。ウイスキーに関しては14年6月に香港で世界初のファンドが組成されたほか、昨年10月にはニューヨーク証券取引所で業界の株価に連動する初の上場投資信託(ETF)も登場した。

  大和総研ロンドンリサーチセンター長の菅野泰夫シニアエコノミストは「欧米ではリーマンショック以降、世界的な低金利の下でワイン投資の人気が高まった。スコッチウイスキーは最低3年は熟成させなければならず、ワインよりも長期の投資で、より高いスプレッドを求める投資家のニーズに応える」と指摘。その上で「仮に実現リターンが低かった場合にはウイスキーを引き取って飲むこともできるので、ウイスキー愛飲者に人気が出るのでは」と語った。

  パトリックCEOによると現在、顧客の7割は英国が占める。残りは米国やフランス、ドイツ、豪州、日本など。現在はポンド建てのみだが、数カ月内に米ドル建ての取引を開始する予定。将来的には日本円での取引も検討するといい、取り扱い通貨を増やすなどして顧客層を開拓する。

14年ぶり高水準

  炭酸水で割るハイボールの人気やポンド安を背景に16年の日本のウイスキー輸入量は前年比22%増の3万7835キロリットルと14年ぶりの高水準に達した。同CEOは、ウイスキーブームに沸く日本からの取引拡大にも期待を示した。

ジョニーウォーカー・ブレンダーズバッチ・レッドライフィニッシュ (右)
ジョニーウォーカー・ブレンダーズバッチ・レッドライフィニッシュ (右)
Photographer: Matthew Lloyd/Bloomberg

  ウイスキー・インベスト・ダイレクトの親会社は、金地金のオンライン取引を手掛けるブリオンボールトも傘下に持つ英ガルマーレイ。175カ国で約6万人の顧客を抱えるブリオンボールトと同様のオンライン取引システムを採用した。

  パトリック氏は、サントリーホールディングスが買収した米ビーム(現ビームサントリー)や「ジョニーウォーカー」などのブランドを持つ英ディアジオで勤務するなどウイスキー業界で24年の経験を積んで会社を立ち上げた。金とウイスキーは共に実物資産だが、ウイスキーは熟成期間を重ねるほど味わいや香りが深まり、価値も上がることが最大の違いだと述べた。

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