IMF:今年の世界成長見通しを上方修正-保護主義台頭の脅威に警告

  • 2017年の日本の成長率予想も1.2%に引き上げ、純輸出急増が追い風
  • 「貿易戦争」のリスクが世界経済に影を落とす-オブストフェルド氏

国際通貨基金(IMF)は18日、世界経済見通し(WEO)の全文を公表し、保護主義的な勢力の台頭によって世界経済の展望の小幅な改善が損なわれ、第2次世界大戦後の経済秩序に深刻な緊張をもたらす恐れがあるとの見解を示した。

  IMFは今回、今年の世界の成長率予想を3.5%と、1月時点から0.1ポイント上方修正。2018年については3.6%成長への加速見通しを据え置いた。IMFは近年、成長見通しを下方修正するケースが多かったが、最新のWEOはかすかな楽観論をにじませた。

  上方修正は「上り調子」の金融市場や、製造業および貿易分野で待ち望まれていた循環的回復を主因としたものだとIMFは指摘。ただ、過去数十年に比べると、世界の成長は低調なままで、「貿易戦争」のリスクが引き続き世界経済に影を落としていると、IMFチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は警告する。

  オブストフェルド氏はWEOの序文で、「世界経済は勢いを増しつつあると見受けられる。われわれは転換点にあるのかもしれない」と分析。しかし、「第2次世界大戦後の国際経済関係のシステムは、それがもたらした総合的な利益にもかかわらず、深刻な緊張にさらされている。その理由はまさに、成長とその結果生じた経済的調整が不平等な報酬を伴う場合があまりにも多かった点にある」と論じた。

  WEOで示された展望改善はIMFの春季会合のため今週ワシントンを訪れる加盟189カ国の財務相・中央銀行総裁にとって朗報となる。IMFのラガルド専務理事は先週、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「世界経済に春の気配が感じられる」と話していた。

米政権の真意は

  「米国第一」主義を掲げたトランプ氏が米大統領に就任して以降、今回がワシントンでの初の春季会合となる。同氏が先週、公約していた中国の為替操作国認定を見送った後、米政権が最もタカ派的な通商政策面の脅しから後退しつつあるのか、それとも単に闘いを選んでいるのか、各国の当局者は注意深く見極めことになるだろう。

  IMFは今年の米国の成長率予想を2.3%、来年は2.5%にそれぞれ据え置いた。1月の段階では、トランプ氏の減税案とインフラ支出増大の計画を織り込んで、見通しを上方修正していた。

  今年の英国の成長率見通しは2%と1月時点の1.5%から上方修正。18年は1.5%への鈍化を見込んでいる。昨年6月の英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択以降、同国経済は予想外の堅調なパフォーマンスとなっており、「マイナスの影響は以前の想定よりも一段と緩やかに具現化している」ことを示唆している。

  今年の日本の成長率予想は1.2%と、1月時点から0.4ポイント上方修正した。日本の成長を押し上げたのは純輸出の急増で、それは17年も続く見通しとされる。

既存体制への逆風

  ユーロ圏では、緩やかな財政刺激や緩和的な金融情勢、ユーロ安が追い風となり、17年の成長率予想は1.7%と1月時点から0.1ポイント上方修正。今年の中国の成長率見通しも6.6%に上方修正されたが、18年は6.2%への鈍化を予想する。

  IMFは新興市場国と開発途上国の全般的な見通しを据え置いた。原油をはじめとする商品相場の回復に支えられ、資源輸出国の状況は徐々に改善すると予想されている。その一方で、天然資源への依存度が極めて高い中東とサハラ砂漠以南のアフリカ地域は成長見通しを下方修正した。

  大恐慌後にまん延した近隣窮乏化政策の再燃を回避しようとの決意の下、世界の金融システムの監督と開かれた市場の促進を目的に、第2次世界大戦中にIMF創設の構想が練られた。

  それでもトランプ氏を筆頭とするナショナリストの政治家は既存のシステムやIMFのような国際機関に疑念を表明している。

  IMFのオブストフェルド氏は「先進国では、国際的な経済統合に懐疑的な各国内の政治的動向の広がりが顕著な脅威となっており、統合が通商体制のための多角的なルールに基づくシステムを通じたものであるか、ユーロ圏やEUといったもっと野心的な地域的取り決めによるか、金融規制のための世界的に合意された基準によるかは無関係だ」と、事前に準備したコメントで指摘した。

原題:IMF Raises Global Forecast While Warning of Protectionism Threat(抜粋)

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