【インサイト】イオン、株価上昇でも「買い」判断ゼロの理由

小売り国内最大手のイオンに関し、かなり誤った思い込みをしている人がいる。

イオンのショッピングモール

Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  ブルームバーグがまとめたデータによれば、イオンは2015年9月以降、アナリストから「買い」の投資判断を付与されたことがない。だがイオンの株価は、アナリスト2人が「買い」としていた15年3月の水準を30%余り上回っている。

目標株価と実際の株価の推移

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  12日の17年2月期決算発表前の時点で、イオンの12カ月予想PER(株価収益率)は62倍と、66倍の米アマゾン・ドット・コムに大きく引けを取らず、年間売上高が100億ドル(約1兆900億円)以上の世界小売り大手の16倍(中央値)を大きく上回った。実績PERでは、イオンが223倍でトップだった(アマゾンは183倍、アリババ・グループ・ホールディングスは54倍、インディテックスは33倍)。

世界の小売業のPER比較

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  一体どうなっているのだろうか。

  イオン株に対するアナリストの見方が弱気な理由を察するのはそう難しいことではない。日本の小売業界はかなり細分化されており、ユーロモニター・インターナショナルによれば、イオンは市場のわずか4%を占めることで昨年のシェア1位になれた。スーパーマーケットや複合型小売りのカテゴリーでも同社はそれぞれ8.6%、19%のシェアを確保し、競合他社を全てしのいだ。

売上高と営業利益の内訳

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  高齢化の流れで買い物客の足がより身近な店舗に向いているため、イオンが支配的立場にある大型小売店市場は数年前から、セブン&アイ・ホールディングスやユニー・ファミリーマートホールディングスが経営するコンビニエンスストアにシェアを奪われている。中核であるチェーン店事業の利ざやがかなり縮小しているため、イオンは全社売上高の10%未満を占めるに過ぎない金融サービスおよびショッピングモール開発から利益の大半を稼ぎ出している。

  だがこれがイオンの動向を説明する要素の一つかもしれない。イオンの金融・不動産事業は膨大で、16年2月期の総資産は4兆7000億円、EBITDA(利払い・ 税金・減価償却・償却控除前利益)は1620億円に上った。

  日本の金融サービス企業のEBITDA倍率の中央値(15.23倍)などを基に計算すると、金融サービス・不動産部門のみの時価総額は約1兆6300億円と推定される。これは、全社の時価総額1兆4400億円をも上回る。

営業利益の推移

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  だがあいにく同社は、金融事業との繋がりが密接な小売り事業を切り離すことはできない。14年にイオンが完全子会社化したダイエー事業の再建見通しが特に不透明であることなどを含め、通期業績を上向かせるための逆風はかなり大きい。

  アナリストらによるイオンの目標株価は年初から18%引き上げられ、それと現在の株価との差は14年以降で最も縮小した。売り上げの伸び悩みや市場の細分化、不採算店の扱いといった問題が残り、持続的な回復はまだ当分期待できないことがうかがえる。イオンは最悪期を乗り越えたかもしれないが、アマゾンに匹敵する企業かと言えばそうではない。

原題:More Prized Than Amazon, and Not a ‘Buy’ in Sight: Gadfly(抜粋)

翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:
シアトル ハイアー千津子 cheyer5@bloomberg.net
翻訳記事に関するエディターへの問い合わせ先:
大久保義人 yokubo1@bloomberg.net
蒲原桂子 kkambara@bloomberg.net

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