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トランプ米大統領、政権発足間もなく公約実現の難しさを実感

  • 中国の為替操作国認定、NATO、米輸出入銀行などで立場変える
  • 選挙期間中に改善唱えた対ロ関係、シリア攻撃で「史上最低」に

トランプ米大統領が中国を為替操作国に認定しないと宣言したことは、目玉の選挙公約を実現する取り組みで同氏がぶつかった壁の厚さをこの上なく鮮明に示している。

  大統領は12日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、中国は「為替操作国ではない」と述べた。主要貿易相手国の為替政策に関する財務省報告書の公表を控え、主要公約から後退した形だ。

President Trump Meets With I-85 First Responders

トランプ大統領

Photographer: Ron Sachs/Pool via Bloomberg

  就任から3カ月足らずというトランプ大統領だが、立場を変えた例はこれだけでない。12日には米輸出入銀行、北大西洋条約機構(NATO)、金利、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長など、これまでの批判の矛先に対し立場を一変させた。

  就任後すぐに北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉や中国製品への関税賦課、医療保険制度改革法(オバマケア)の廃止に動くとも公約していたが、それらは行き詰まりや先延ばし、または断念を余儀なくされた。先週のシリアに対する米国のミサイル攻撃は、トランプ氏が選挙期間中にけん制していた類いの武力介入だ。

  もっとも、大統領が就任後に選挙選での公約の実現に苦しむケースは珍しくない。オバマ前大統領は、キューバ・グアンタナモ米軍基地のテロ容疑者収容施設を閉鎖するとの公約を守れなかった。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は財政赤字の大幅拡大や景気の失速に悩まされ、クリントン元大統領も医療保険制度改革を実現できなかった。

  ただこれらの歴代大統領は、こうした野心的な目標の達成への取り組みで政治的な逆風に一部直面したことを認めている。就任直後の劇的な変革を威勢よく約束したトランプ大統領は、この点が違う。

方針転換は美徳

  選挙期間中にはたいてい語気が強く、時に大げさな公約をしたトランプ氏だが、立場の転換やそれまでと矛盾する発言をすることも時折あった。2016年3月の共和党予備選での候補者討論会では、「柔軟でない人が成功した例は見たことがない」と話し、立場を変えることこそ美徳だとの見方を示した。

  ただ、トランプ氏が伝えてきた中核的なメッセージは、ワシントンの政治家は口先ばかりで何もしないが、自分は公約通りに行動するというものだった。昨年7月、共和党全国大会での指名受諾演説では「私ほどシステムをよく分かっている人物はいない。だから私だけが事態を修復できる」と主張した。

  トランプ大統領は中国に関し、同国がもう何カ月も元相場を操作していないことや、北朝鮮問題で協力を得る必要があることが立場を変えた理由だとWSJ紙に話した。だがこの説明は、中国が米製造業の雇用を「奪い」、米国の産業を守る上でオバマ前大統領が力不足だったという選挙戦中のメッセージとは対照的だ。

  トランプ氏は誇張に終わったことの一部を有権者に大目に見てもらえるかもしれないが、貿易関連の取り組みで行き詰まったことのしこりは今後長く残る可能性がある。トランプ氏自身も、貿易に関する立場の表明なしでは大統領に当選できなかっただろうと述べている。だが同氏は、NAFTA再交渉や新たな関税の導入といった最も大衆迎合色の強い公約ではあまり進展を見せていない。

想像上回る複雑さ

  米通商代表部(USTR)次席代表代行を務めたウェンディー・カトラー氏は、経済政策、特に通商政策を実施する上での複雑さはトランプ政権の想定を上回るもので、他の同盟国と連邦議会の両方との調整の必要性に実現を阻まれたのではないかと指摘する。

  トランプ氏は米輸出入銀行に対する見解を変えた理由について、「小企業、ベンダー企業が非常に大きな支援を受けていたことが分かった」ためだとWSJ紙に説明した。トランプ氏は、中国の習近平国家主席が首脳会談で朝鮮半島との中国の歴史的経緯を説明したことを明らかにし、事態は「人々が考えるほど単純でない」と認めた。また、オバマケア代替法案の採決を共和党が断念した際に、大統領は「ヘルスケアがここまで複雑だとは誰も知らなかった」と述べた。

  トランプ氏の苦しいスタートは、経済問題に関する政権内の「分裂」で一部増幅されていると、前出のカトラー氏は指摘する。トランプ氏がUSTR代表に指名したロバート・ライトハイザー氏は、いまだ議会承認を受けていない。中国からの輸入品に45%の関税を課すと息まいていたトランプ氏だが、これも実現しておらず、先の米中首脳会談で具体的な合意を取り付けることもできなかった。

「米国第一」から逸脱か

  トランプ氏は就任早々、外交問題の複雑さにも苦しめられている。シリアのアサド政権が民間人に対し化学兵器を使用した疑いを受け巡航ミサイルで同国を攻撃したことは、トランプ氏の「米国第一」主義から逸脱した印象を与えただけでなく、選挙戦で関係改善を唱えていたロシアを逆に遠ざける結果も招いた。

  トランプ大統領は記者会見で「現在、わが国とロシアは全くうまくいっていない」とし、米ロ関係は「史上最低かもしれない」と述べた。

  米国が世界の警察官として振る舞うことを各国は期待すべきでないと、選挙戦中に語っていたトランプ氏だが、12日には「世界は混乱状態にある」とした上で、「われわれが仕事を完了した段階で、ずっと住みやすい場所になるだろう」と、こうした役割に前向きな姿勢をにじませた。

原題:Two Months In, Trump Finds Big Promises Are Hard to Keep(抜粋)

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