経営再建中の東芝のメモリ事業売却で、東芝が買収に最高額を提示している台湾の鴻海精密工業への売却を手控える可能性がある。鴻海が関係する中国への技術流出などを懸念すると日本政府だけでなく米国政府も反発するとみられることが背景にあると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。 

  鴻海が買い手となった場合、中国との関係の深さから日米両政府が売却を認めない公算があり、債務超過を早急に解消したい東芝にとって、金額以上に考慮すべきリスクとなり得ると、関係者らは指摘している。鴻海は米アップルのiPhone(アイフォーン)の主要な受託生産者で大半の工場を中国に持つ。

  売却の1次入札では、鴻海と韓国のSKハイニックス、米ブロードコムは「東芝メモリ」の事業評価額として2兆円超を提示。鴻海は最大3兆円を応札できることを示唆したという。日本企業は現時点で入札に参加していない。

  関係者によれば、この結果、東芝はブロードコムなど応札価格の低い提案を真剣に検討している。また、東芝や日本政府が呼び掛け総額5000億円程度をめどに複数の企業から出資を募り、米ファンドなどと組む「日本連合構想」も浮上している。今後も新たな買収額や、買い手候補間での連携が提案される可能性がある。2次入札の締め切りは5月中旬という。

技術流出

  菅義偉官房長官は11日の会見で、技術流出などへの懸念から半導体に関する売却は、日本政府による外為法での審査対象になるとの認識を示し、「国の安全などの観点から厳格な審査をすることになる」と言及。鴻海による高値での応札については「重要な技術と認識し、政府としてその動向を極めて重視している」とした。

  東芝の綱川智社長は3月14日の会見で、「技術の流出ということだが、今もサンディスク、ウエスタンデジタルなどと一緒にやってる。そういう意味で今後も政治的なことで問題になる国は避けつつ、この技術を大切にして伸ばしていきたいと思う」と述べた。ウエスタンデジタル、サンディスクは米半導体企業。

  鴻海は今回の東芝メモリ買収で、以前、政府に反対されながらも再建中のシャープの経営権を取得したときのように積極姿勢を示している。シャープ買収の際に郭台銘(テリー・ゴウ)会長は始めに極めて高い買収額を提示し、後に引き下げた。

政府と財界

  世耕弘成経済産業相は11日の閣議後会見で、東芝の半導体技術について「日本の成長戦略にとって非常に重要で、大量の雇用を抱えていることや情報セキュリティの面からの配慮も重要だ」と指摘。日本連合について経産省が「さまざまな企業とコミュニケーションをとるということはあり得る」と述べた。

  東芝社外取締役の小林喜光・経済同友会代表幹事は3月、「桁違いに重要なテクノロジーを本当に手放してよいのかと言えば、ノーだ」と断言した。その上で、仮に流出するなら、すでに連携している米国企業などが望ましいとの考えを示唆した。

  東芝の再建に向けた子会社や事業売却を巡っては、米トランプ政権が技術的な機密情報の流出を懸念し、東芝傘下の原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリックを中国の投資家が買収する可能性を警戒。米国または同盟国企業の買い手を探そうとしていることも明らかになっている。

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